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偵察任務(第九話)

天聖暦1048年星輝の月 ラングレイ跡郊外

今日も、雪が横合いから殴りつけるように吹き付けてくる。
その白く冷たい加護を受けながら、一行は偵察任務を終え帰途に着いた。

ヴェガ:「さて・・・さっさとずらかろうぜ・・・」
    (行きと同様、自身の位置する方向に対して最大限の警戒を持って進む)
    <思いの他・・・緩かったな・・・。連中は既にラングレイを
     拠点として重要視してねえってことなのか・・>


リリィ:「………」
    (仮面を隠すようにフードを引き下げ、声なく唇を動かし、風の中ラングレイに
    背を向け歩き出す)

クーガ:「♪行きは良い良い帰りは怖い〜って事で、警戒は怠らず帰るぞ」
     (殿の位置をキープしつつ、後方に気を使いながら雪原を歩く)

慎重に丘を登り、林を視界の盾にし、雪原に穴を掘って身体を休める。
行程そのものは行きと変わらないが、帰る者の常として、足は速めだ。

クーガ:「足跡を辿られると面倒だ…ある程度の離脱速度は必要になる、慎重にかつ急いで」
     (ガシガシと慣れたガニ股で行軍)

ミール:「小事が万事を台無し・・・か。失敗なんてしてらんないわね・・・。」
     (来た時よりも更に警戒を高めながら進む)

ヴェガ:「こんなとこで見つかっちまったら・・・さすがにヘヴィだな・・・」
     (時折全方位の上空を見渡し、ハーピーの存在の有無を確認する)

天候の良い日は、時折ハーピィの姿を見かけるが、遠ざかるごとにその率は減っていく。

クーガ:「そろそろ中継基地があるポイントだな、近寄る必要もない、迂回するぞ」
     (地図を確認し、来たルートで見つけた中継基地は迂回を指示)

その日は天気も良く、足跡はしっかりと雪原に刻まれていた。
中継基地も近く、近くにハーピィが遊弋している事を考えれば、危険な事態だろう。

リリィ:「…」
    (フードを落として不安定な足場につま先で立ち上がり、手の楽器をぴたりと構える)

リリィは風向きが変わるのを待ち、呪歌の準備を整える。

リリィ:(最初の一音が鮮やかに大気を震わせて響き、続く一音が余韻に重なる)

音色の響きに従って緩やかに風が舞い、ささやかな地吹雪となって一行の足跡を消していく…

丘陵の基地、林の中の偵察所を迂回し、一行はさらに南へと歩を進めていく。

ミール:「私がまったく気づかないなんて・・・ショックだわ・・・」
     (城壁内で会った青年のことを思い出し、ぶつぶつとぼやきながら歩く)

ヴェガ:「ところで・・ミール・・・中はどうだった・・?」
     (歩みを進めながら鋭い眼光をミールに向け、問いただす)

道中、ミールはラングレイで遭った青年との会話を思い起こしていた。
銀髪をした、どこにでもいそうな感じでありながら、ミールですら気配を感じ取れなかった男…

ミール:「あなた・・・何者?」
     (慎重に言葉を選びながら、絞り出すような声で質問を投げる)

青年:「ご覧の通り、ラングレイに住むただの人間です」
    (ぱっと手を広げてみせ、薄く笑うと観察を始める)

ミール:「ありがと。・・・・・・ゼクスでは、ないわ。」
     (質問には微妙に曖昧に答えつつ、相手の表情が変わった位置を見て、むっ、と一瞬眉をしかめた)

青年:「なるほど、いや失礼」
    (その様子に、あっけらかんとして笑う)

短いやり取りの後、青年はミールを何事も無かったかのように解放した。

ミール:「どうして・・・私を逃がすの?」
     (相手の行動に訝しみ、警戒を高めつつ尋ねる)

青年:「どうしてでしょうね?…ああ、貴女の雇い主さんによろしく…」
   (韜晦した表情で言うと、フードをかぶり直し、去っていく)

その後も、特に城内で異変は無く、後をつけられている様子も感じられなかったのだが…
もっとも、あの青年が相手では警戒するだけ意味が無かったかもしれない。

クーガ:「・・・」
    (時折ラングレイ方面や街道方面を振り返っては続く)

リリィ:「ラングレイ…」
    (ぽつりと言い、繊指を差し出すと地図で補給路のあった位置を静かになぞる)

ミール:「そういや補給路かなんかを見つけたんだっけ?」
    (どれどれ、と地図と実際の道とをてらしあわせて見てみる)

その辺りは一帯林になっているはずで、その向こうにも特に何も無い感じだ。
北の補給路の代わりに使っているとすると、随分と遠回りになる。

そして、一行は雪原を突破し、遂に翡翠の森を眼前に迎えた。
雪上をゆるやかに舞う雪が、去り行く一行を名残惜しそうに見送る。

ヴェガ:「・・・・」
    (無言で行軍を進めながらも今まで得た情報を自身の中で整理する)
    <やはり腑に落ちねぇ・・・が、今は考えてもしょうがねぇな・・・>

クーガ:「…気に入らん…何がかは解らんが…何かを見落としているのか?…
     今さら戻るわけにもいかんし…今は無事帰ることが重要か…」

     (ラングレイ方面を振り返り、一言つぶやきつつ、皆に続く)


天聖暦1048年星輝の月 翡翠の森

一行は死と隣り合わせの雪原を抜け、ようやく翡翠の森にたどり着いた。
本来ならば雪原より恐ろしい場所なのだが、彼らには頼れる小さな味方がいるのである。

クーガ:「リラは居るかね?」
     (近づく森に前の面々に尋ねる)

リリィ:「…何」
    (人影を横目に見るが視線を前に戻して)

見れば、すでに森の入り口でおーいと呼びかけつつ手を振る少女の姿がある。

リラ:「みんなおかえり!」
   (笑顔で駆け寄ってくる)

トール:「リラちゃん、ただいま〜」
    (片手を振る)

ミール:「はぁ・・・なんかものすごく久しぶりに会うって気がするわ。」
     (リラの顔を見ると、溜息ひとつ)

森の中に足を踏み入れた一行は、ようやく雪から解放された。

クーガ:「やっとコイツが外せる」
     (森の入口でカンジキを外し、ガニ股になった自分の足をさする)

ヴェガ:「やれやれだぜ・・・・」
    (森の入り口に到着すればカンジキを脱ぎ捨て、辿ってきた道
     筋を振り返る)

やはり、そこは何も変わらぬ白い世界であった。
場所によって天候も変わるのか、奥の丘は雪で白く塗りつぶされて見えない。

リラ:「ご苦労さま、…雪ひどかったでしょ?」
   (ねぎらいつつ着替えの手伝いなどしている)

クーガ:「よう、また頼むわ。リラ合流って事で陣形、夜営は以前の6人体制のとおりで」
    (リラに手をあげて挨拶しつつ、陣形等の確認)

ヴェガ:「おうよ・・・」
     (クーガの指示に対してぶっきらぼうに応え、従う)

装備を雪原から森の装備に整えなおすと、再び一行はリラの案内で帰途に着いた。
森の中は相変わらず奇妙な風景だが、さすがに食傷気味という感じだろう。

クーガ:「ここまで特にトラブルが無いと、逆に怖くなるな………あれ?」
     (ふと口に出た言葉に疑問を抱く)

トール:「どうしたの?クーガちゃん」
    (視線を向けて)

クーガ:「俺はMなんかじゃないはずだ・・・
     もはや、平穏な人生ってのに満足できない身体なのか?
     『のんびり、まったりな平穏』は俺には似合わないのかぁ〜?」

     (ふと感じた疑問にブツブツと独り言で自問自答し頭を抱える)

リリィ:「…。…」
    (悶絶するクーガを無機質な沈黙で眺めている)

リラ:「あっはっはっ…」
   (笑い転げている)

奇妙な光景、奇妙な案内、奇怪な生物などは既に特筆するまでもない。
もっとも、これで翡翠の森の外周だというのだから、内部は如何ほどであろうか。

クーガ:「んん?ガニ股が癖に!!」
     (すっかりガニ股歩きの癖がついたらしく、意識的に直そうとするが、
     無意識に戻り、矯正に四苦八苦しつつ歩いてる)

トール:「あら…その歩き方もなかなかワイルドでいいわよ?」
     (まあヴェガちゃんには…といつもの台詞を並べて)

ヴェガ:「・・・・・」
     (疲労が拭い切れないのか、行きの道程よりも言葉を発することなく
     黙々と歩を進める)

リリィ:「…」
    (面白い事など何もないというように沈黙したまま)

一行は見覚えのある道、明らかに初めて見た場所などを通り過ぎていく。

クーガ:「どうも、妖魔の支配権内から抜けて気が緩んでるなぁ…まだ安心できるほど
     安全な領域ってわけでもあるまいに…」

     (自分の意識を切り替えようと、首を振ってゴキゴキ鳴らし、気を引き締める)

ミール:「何か・・・見落としてるようなことは・・・」
     (やはり青年の言葉が気になるのか、何か違和感や
      見落としがないか考えをめぐらせながら進む)

行きの行程も短いものだったが、体感的に帰りはさらに短く感じる。
道中では、いつものように野営を繰り返しながら、翡翠の森を南へ南へと進む。

ヴェガ:「やっぱり・・・こういうのは俺の性にはあんまり合ってねぇな・・・」
     (野営時、焚き火の炎と自身の大鎌の刃を交互に眺めながらひとりごちる)

リリィ:「…そう」
    (倦怠さえすり切れた老人のように乾燥しきった口調で答える)

…そして、一行は予定日程よりも随分と早くに翡翠の森を抜けた。
馬車を預けたプルミエールの村に立ち寄り、ついでに村の食堂で食事にありつく。

ヴェガ:「フゥ・・・やっとマトモな飯にありつけるぜ・・・」
    (翡翠の森を抜け、立ち寄った村が見えればやや疲れた表情を
     見せつつも口元を緩める)

クーガ:「♪にぃ〜く ほいっ ♪にぃ〜く どんとこい ♪にぃ〜く」
     (馬車を回収した村の酒場での食事に、今までの食生活を振り返り『肉コール』)

リリィ:「…馬車は何処」
    (陶鈴のように響く感情の無い声で問いかける)

村人:「あちらでお預かりしていますよ」
   (厩舎を指し示して)

久々に食事らしい食事にありついた一行は、一泊の後、馬車と共に村を離れた。
道はあるものの森は続いており、もうしばらくは案内が必要となる。

クーガ:「馬車があるとやはり楽だな…自前の馬でも買うか…どの程度するのか知らんけど」
     (馬車を操りながら馬相手にしゃべっている)

トール:「どんな馬を選ぶか次第だけど、最低金貨1枚は固いところねえ」
    (荷台から顔をだして)

リリィ:「…」
    (ようやく取り戻したヴァイオリンケースを大事そうに抱えて座っている)

ヴェガ:「・・・・・」
    (馬車に揺られ、大鎌の柄を抱きつつ静かに眠っている)

そして、翡翠の森を離れる時が来た。
道案内の狩人ともここで分かれる事となる。

リラ:「…じゃあ、みんなまたね!これから先も気をつけて」
   (馬車から軽快に降りると、手を振って)

リリィ:「…。…またいつか」
    (習った通りの言葉を告げて)

ヴェガ:「道中助かったぜ・・・。それじゃあ・・・またな・・・」
    (リラとの別れ際軽く手を挙げ踵を返す)

トール:「またね!リラちゃん」
    (荷台から大きく手を振って)

リリィ:「…」
    (小鳥の姿が見えた気がして木々の合間から見える空に視線を向ける)

木々の隙間から葉なりがして、小鳥が馬車の上を飛びすぎていく。
小鳥はしばらく上空を舞っていたが、馬車が翡翠の森を遠ざかると、やがて森に向かって飛び去っていった。

草の萌え始めた大地を分かつ街道を、馬車は軽快に進んでいく。
厳冬の頃にガウディを出発し、今は春の足音が近づいていた。

ミール:「うっーうっーうまうま〜♪」
     (よくわからない歌を口ずさみながら、手綱を操っている)

クーガ:「ふう・・・流石に疲れがたまってるな、もう少しだ」
     (馬車の中で揺られながら、肩や腰をさする)

リリィ:「…」
    (御者台に座って流れる風景を眺める)

ヴェガ:「・・・また、季節が変わり・・・戦況が動く・・か・・」
     (馬車を操りながら、辺りの景色を見渡し漆黒の双瞳を細める)

一行が命を懸けてもたらした情報は、果たしてガウディの、人類の行く末にどの様な道筋をつけるのだろうか。
やがて、一行を乗せた馬車は、堅牢な城塞都市と化したガウディの市門をゆっくりと抜けていった…

天聖暦1048年 珀錫の月 武器塾

その日も、武器塾奥の道場からは、激しく得物を打ち合う音や気合の入った声が響いていた。
貴族も、平民も、元奴隷も、相手構わず遠慮会釈無く、共に多くの傷を作りながら稽古に励んでいる。
ただ、座して過ごすは黙って死を待つに等し―ガウディの民には、少なくともそれだけの危機感があった。
しかしそれは、確実に迫る妖魔の脅威に対する、焦慮や絶望のはけ口であったかもしれない。

人類は5年前、フィンディアで何とか一矢報いたものの、以後他の街を幾つも陥とし、人口を大きく減らした。
既に人類は妖魔に対して種として劣るのみならず、領土に劣り、人口に劣り、兵力に劣り、生産力に劣っていた。
また妖魔側は妖魔王の下に団結一致しているというのに、人類は都市ごとに孤立している有様だった。
人々の危機感は、それを本能的に肌で感じたものだったろう。
足掻くのを止めたとき、待っているのはただ”絶滅”の二文字だけなのだから…

「塾長、来客です」
書斎で幾つかの手紙を開いていたジョンは、案内の少女の背後に立つ男の姿を見ると、思わず立ち上がった。
そこには細いパイプをくわえた、白髪の混じった銀髪の初老の男が居り、ジョンを見ると軽く頷いた。
「…ああ、ありがとう。稽古に戻ってくれ」
ジョンは案内の少女に言うと、書斎の机の前に回って初老の男を出迎えた。

「わざわざご足労願わなくとも、今日にでもご報告に上がろうかと思っていた所です」
「いやなに、野暮用でちとこの辺を通りかかったものでね。もののついでだよ」

初老の男は気軽にそう言うと、ジョンのすすめに応じて応接間に入り、ソファに腰掛けた。
「さっきのは君の娘さんかい?」
「え、ええ。分かりますか?あれは妻似なんですが」
「ははは、見た目が全てじゃないよ、ジョン君。そっくりじゃないか」

本人が聞くと嫌がるでしょうね、とかわしつつ、ジョンは必要な資料をまとめて、向かい合うソファに掛けた。
「これが、偵察結果と…今回偵察に向かったメンバーです」
初老の男はジョンの提出した書類を手にすると、さっと目を通して軽くうなった。
「ふうむ…大したものだねえ。多くは遺跡に流れてただろうに」
「まず、一流どころです。期待に十二分に応えてくれました」


ジョンはしばらく経路や経費などの説明をした後、やや聞きにくそうに尋ねた。
「…上の方はどうなってます?」
「ん、慎重論がほとんどだね。先日、リオンで敵戦艦が出現したってのが効いてる」
「そうですか…」
「ただ、陛下は何かお考えのようだったな。鶴の一声があるかもしれないよ」

二人はさらに幾つかの事項について話し合い、それを終えると、席を立った。

「そうそう…例の話、考えておいてくれたかい?」
武器塾の入り口で、初老の男はジョンにちらと視線を向けて言った。
「ええ、折角ですが…」
「そうか…まあ、君ならそう言うと思ったよ。フェルト卿やワカード君は諦めないだろうけどね」

言うと、初老の男は軽く片手を上げ、年齢を感じさせない足取りで歩き去っていった。

ジョンはそれを見送ると、やや疲れた表情で息をついた。
―分に合わん事をやっているな。いや、性に合わんというべきか…
戦場での、鉄と、血と、死にまみれた極限の生活をふと懐かしく思いながら、ジョンは扉を閉めた。

今回の更新をもって、MM「偵察任務」は終了となります。
参加者の皆さん、お疲れ様でした。

基本報酬:1G
追加報酬:1G25S
計:2G25S

MeP
クーガ:10
リリィ:10
ヴェガ:9
ミール:8

※差分は遅刻分や未提出分です。

GM:ここなっつ
千年都市ガウディに戻る

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