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天聖暦1045年

新たなる序章

新たなる序章……「解放都市へ」

「大陸において最大の国家は?」と問われた者の顔には苦渋の色が浮かぶのではないだろうか。天聖暦1043年、天静の月「背徳の王の声明」により、当時大陸最強の国家であったサーゲオルーグ王国は崩壊した。
 いや、それは大陸に暮らす民が「最強であり続けることで希望」としていたサーゲオルーグ王国の王都が陥落し、当時から「真の意味で最強であり、最大の版図」を有していた妖魔王国バーネッツが希望を打ち砕いて人類種の歴史において「最強で最大の国家」という位置づけを得たということを意味したに過ぎない。
 では、「大陸において最大の都市は?」と問われた者の顔にはどのような色が浮かぶのであろう。少なくとも、そこには絶望の色が浮かぶことはないはずだ。
「希望の盾」と呼ばれる都市「千年都市ガウディ」は、ラングレイに並び称される程の「城塞都市」へと変貌を遂げ、幾多の妖魔軍の侵攻を退け続けている。
 正統なるサーゲオルーグ王家の血筋である「アンガルスクⅡ世」は生まれながらに英雄となることを義務付けられ、人々の希望を一身に背負いながら、ガウディにあり、また、彼を支えるようにガウディ評議会の最高議長を務める「ノーヴァ卿」の姿がある。
 蒼の竜騎士団と白の近衛騎士団を有し、冒険者ギルドの者たちや、多くの名のある傭兵たちをが終結しているガウディの武力は、これまでの妖魔軍からの侵攻を全て退けていることからも明らかであろう。
 そのようなガウディには、日々多くの一攫千金を求める冒険者や名声を求める傭兵たちが、対妖魔王国という旗の下に終結し続けている。

そして「希望の盾」を支える「希望の鎧」である「港湾都市シーポート」の存在を忘れるわけにはいかないことだろう。ニル卿という圧倒的なまでのカリスマを有し、知略と統治に優れた指導者の下、シーポートはかつて、もっとも豊かだったガウディに匹敵するほどの交易力を手に入れている。
ガウディという消費の激しい街へと多くの資源を送り、その戦線を支えているのは間違いなくシーポートであり、ゼクスセクス王国のスクリーナやヴォンジア島との船による交易をはじめ、翡翠の森から広がる豊かな自然を近くに持つシーポートの支えがなくなれば、かつてのラングレイのように補給を断たれてガウディが倒れる日は遠い日のことではないだろう。
これまで歴史の中で大きく名を取り上げられることのなかったシーポートは、徐々にその担うべき役割を大きくし続けており、それに伴うかのようにこの街の中へと流れ込んでくる金銭は増え続けていた。
 多くの船を持ち、海上交易によって着実に、けれど、急速にその力を増しており、この街にもまた、多くの冒険者たちが交易を行う者たちの護衛をはじめ、翡翠の森から広がる森への収穫、そして何よりも出没する妖魔種から街を守るために集まっている。
そして、ガウディ、シーポートと並び港を持つ、その都市をこの時代の中で忘れるわけにはいかないことだろう。
まさに「希望の剣」……死都に居を構える背徳の王チェスターからの招聘を断固として拒絶した北方の猛者たちが「北方の英雄ジークフリード=フォン=ノキア」の下に集った「傭兵都市リオン」は、「ノーザン血盟」により発動した「対妖魔王国」の急先鋒都市である。
背徳の王の命により、北方の貴族たちの生活はまさに「蹂躙」された。それは過ぎ去った過去とするには、あまりにも残酷であったのではないだろうか。大地を民を友を家族を……まさにすべてを蹂躙され、圧倒的な暴力による虐殺が行われたことを知る者は少なく、その少なさこそが、どれだけ徹底的に背徳の王が妖魔種の力を持って北方の民を虐殺したかを裏付けたのではないだろうか。
ゆえに、生き残った北方の民は自らのことを「血盟の民」と呼び、傭兵都市リオンへと集い、無言のままに武器を手に取り死都の首を狙っている。

「大陸において最大の都市」と問われた者が答えるとすれば、それは「千年都市ガウディ」か、それとも「港湾都市シーポート」か、「傭兵都市リオン」か……判断に迷うところなのではないだろうか。
 けれど、この三つの都市のどちらがかけたとしても……希望という名の日差しは地平線の彼方へと沈むであろうことを誰もが知っている。
 ゆえに、三つの都市が持つ二つ名を用いて言い表す者は少なくない。

「【解放都市】……それが、この大陸における最大の都市の名」

 解放都市という名に込められるのは、希望そのものなのだろう。20年前には妖魔種をものともせず、人類種は大陸のあちこちに村を作り、大地を耕し……その版図を広げ続けていた。
 けれど、すでに大陸のあちこちに村を作るのは妖魔種であり、人々は高く高く築かれた城壁や外壁の内側で生活することで己の身を守るしか術を持たなくなりつつある。
 妖魔種が版図を広げるにつれて、押し込まれ、追い込まれ、閉塞感に悩まされる人々にとって「開放」という言葉は希望そのものになり始めている。

 遠く南方の海の獅子は静観し、傍観者の態度を崩そうとはしない。
 近く大陸の三分の二の支配者は侵攻し、この強大な拳を持って従わぬ者たちを打ち砕こうと動き。
 枯れ行く砂の国の猛者は苦悩し、国という枠組みの中で、己の意思と国の意思の狭間にて揺れ。

 ……そして、【解放都市】はこの時代の奔流の中にあって、その行く末を見定めることができず、日々を過ごす。
 過酷な生存競争の中で、生き残る術を求め、生きている意味を求め、生きることの充足感を求め、人は【解放都市】へと、その足を踏み入れる。
 そこに待つ未来を知る者は誰もいない……

文責:海月


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