赤い空

早川 史人 <rsc98642@nifty.com>
Mon, 11 Aug 2008 23:49:31 +0900


イヤーカフス?に関するミッション導入となります。
以後の行動次第で、ミッションにも、放置することも可能です。

イヤーカフスをミリアルから返してもらった日の夜
ルカは夢を見る

やさしい母に起こされ、顔を洗うために水桶を覗けば
うつる金の髪のハーフエルフの少女…人間にしてはやや長い耳には
銀のイヤーカフス、それが今の自分の姿
疑問を持つことなく、そして違和感を感じず、ルカはエルフの少女を演じる。
むしろ、同調している。彼女の見るモノ、聞くモノ、彼女の視点から彼女の
生活を見、体験している。どこか、懐かしさがこみ上げる…
自分の故郷とは違うが、今は自分もそんな頃があったのかもしれない。

とすら、感じている・・・
森の中の小さな村、小さな畑を耕し、木を切り、狩りをして生活するような
そんな村で、のどかででも、温かい幸せな時間を過ごす。







やがて、その風景はブラックアウトし、シーンが変わる。

恐怖と動揺を感じながら手をひかれて走っている自分…
ルカの手を引き森を駆けるのはおびえた表情の母

父は村に残った…妖魔の襲撃から自分と母を守るため。
母親は自分を守るために必死に走っている。
恐怖におびえているはずなのに、必死に自分をなだめつつ…

やがて遠くから聞こえてくる咆哮と怒声に振り向けば
月夜に黒煙を登らせる赤い空…ルカは理解した…村と森が燃えているのだと
しかし、少女はただ恐怖し、もつれる足を必死に動かす
母親が励まし、なだめ、手をひかれて

空は赤い…月が真上にある夜中なのに、夕焼けのような赤い空

走る…走る…走る…しかし、自分の歩幅は短く、森は平らではない
腰ほどまで高い草が、速く走るのを妨げる…
もう、かなりの時間を走って、いくら呼吸をしても、肺は酸素を求め
鼓動は口から心臓が飛び出そうなほど、ただ苦しい。

疲労の余り、転んだ瞬間、目の前の母親が何かを叫び風切り音が
聞こえたのは同時…

ドスッっと音が連続して響き自分の上に被さった母親の体からは、
ヌルリと温かい液体が滴り落ちる。
背の高い草が周りの視界を妨げる。
目の前のにある母親の顔は、かくれんぼをする子供のように
人差し指を立てて口に当ててほほ笑む「静かに…」の意味だ

自分の体にヌルリとした滴が垂れるたびに母親の体は冷たくなっていく
それでも、少女は黙った、本当は母親の名を呼びたかった
「助けて」と叫びたかった…母親が「静かに」と言ったから黙っていた
わけではない。恐怖で声が出ないだけだ

それなのに母親は「良い子ね・・・」と呟くように囁いて沈黙した
近づいてくる足音に、声が手相になるのを必死で堪える
走って激しくなった鼓動の音すら耳障りだ
「怖い・・・怖い・・・死にたくない…助けて・・・」
ただひたすら沈黙し祈る、足音は近付いてくる…
母親の亡骸の下敷きになってみる、醜悪な妖魔の群れ…
その中に弓を手にした腰まで伸ばした銀髪のダークエルフの姿

倒れた母親の亡骸を見ると、共にいたゴブリンやオーク達に
指示して立ち去って行く…

恐怖は去った…そう安堵した瞬間に体に熱い何かが通り抜けた。
熱いと感じたのは痛み。

体に力は入らず、視線をさまよわせれば、母親の顔越しに見える
先ほど見た、ダークエルフの醜悪な笑顔

自分を守るための両親の努力を『無駄』の一言で片付ける
そんな嬌声が聞こえてくる。

母親の背には細長い剣が刺さっている・・・ああ自分は母親ごと
貫かれた…そう理解した瞬間、力が抜けて行く・・・

自分と母親の地で汚れた銀のイヤーカフスは、
あのダークエルフへの憎しみと無念さと共に黒く染まっていくのを見ながら
一つの名を聞きルカは目を覚ました。

「ルシアン様…」

とダークエルフの名を聞きながら

目を覚まし、枕もとを見れば、何処かにしまったはずの
イヤーカフスが存在する。
見るたびに、恐怖と悲哀と怒りを感じる…
村の位置もガウディの北東に存在する小さな村と言う事は覚えている。

そして、鮮明に覚えているのは、腰まで伸ばした長い銀髪の
長弓と長い細剣を扱う「ルシアン」と呼ばれるダークエルフ

以上です。 



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