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濃霧調査

濃霧調査(第一話)

天聖暦1048年 神滅の月 千年都市ガウディ

その日、肌寒いと感じるほど気温が下がった。
もう秋か、ガウディの街でも長袖を着る住民が出始めてくる。
木々もその有り様を変え始め、場所によっては見事な紅葉が目に入り情景を楽しむことができるだろう。
収穫の時期でもあり、ガウディの街はいつも以上に賑わっている。


その日、肌寒いと感じるほど気温が下がった。
もう秋か、いや違う・・・これは秋によるものではない。
視界を覆いつくす白、地上にいれば快晴の眩しさなど知ることはできないだろう
昼夜問わず森林に漂う白い影、村人は気味悪がって森林部へ、湖へ近づこうともしない。
土地柄を知らぬ者が森入れば迷うだろう…ここは天然の迷路と化していた。


突如現れた湖の砦、いくつか話は聞いたが何とも曰くがつきまとう建物だ。
塔の窓から霧を見下ろしつつ男は手紙を書すと伝書鳩の足にくくりつける。
冒険者達によって調査されたこの砦"エイラフォート"。
サーゲオルーグ・バーネッツの中間にあるこの砦は戦略上重要な拠点と成り得る。
現在修繕作業が進められている為、この濃霧によって作業を遅らせるわけにはいかない。


伝書鳩が冒険者ギルドに届く。
数日後、ここ旧冒険者ギルドの掲示板に一枚の紙が張られた―――


依頼内容:エイラ湖に発生した濃霧の調査と解決
依頼者:冒険者ギルド
場所:エイラ湖
報酬:基本30S + 報告内容による
危険手当:特になし
期間:新聖の月 14日 (10月14日)
募集定員:最大7名

補足①:行き来の馬車と食事代はギルドが負担する。
補足②:濃霧の中竜の姿を見たという情報有り、真偽は不明。


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やたら目立つ馬車(看板)に集まってくる冒険者達、
どれも見たことがある顔かもしれない、何せ記憶亭からしか来ていないのだから。

フィア:「おはようございます。フィアと申します。
     今回はどうぞよろしくお願いします。」
    (約束時間より早めに現れ、大げさな看板にややひるみながらも丁寧に挨拶する)

フィア:「・・・この、なんというか、妙に気合いの入ったお出迎えは、貴方の意図で・・・?」
    (毎回こうなのか、それとも依頼者によるものなのかを問いかける気配を滲ませて)

シェーン:<朝は肌寒くなってきましたねぇ・・・
    (荷物を手に馬車停留所へと現れる)

シェーン:「さて…ギルドの馬車は…。」
     (あたりを見回してそれらしい馬車を見つけようと)

シェーン:「・・・・・・。またえらく大々的ですねぇ・・・。」
     (苦笑を漏らしつつも,看板を目当てに馬車へと近づいていく)

ナーク:「・・・お、これだねー。なんとも目立つ目印だこと・・・」
(ご丁寧な看板に目を丸くしながら荷物をまとめた袋を持って馬車に近づく)

ゼロ:「・・・こちら・・ですか・・。」
(大袈裟とも取れる看板を見ながら、その周辺へ視線を走らせ歩いてくる)

ゼロ:「・・遅くなってすみません。・・水袋などの・・準備で・・。」
(ギルド員や周囲に居るメンバーへ微笑と会釈を投げかけ、言い訳)

ユーリ:「……」
     (爽やかな朝に似つかわしくない辛気臭い表情で馬車停留所へ)

ユーリ:<…あれ…だろうな…?
     (妙に目立つ看板に歩み寄り、一礼)
     「…旧ギルドに登録させてもらっております…ユーリと申します…」

メルディア:「おはよう、遅刻、じゃないわよね」(集合地点に顔を出す)

フィア:「おはようございます。
     ・・・あなたも参加されるんですね。よかった。
     わたしは何も知らずに申し込んでいまったから、頼りになる方がいて安心です・・・」
    (見知った顔を認め、ほっとしたように柔らかく微笑む)ゼロ、メルディア

フィア:「道中は何事もないと思いますが・・・戦闘は不得手です。
     何かあった場合、指示をいただけるとありがたいです」
    (メンバーを見回して、ふと合った視線の主に少し申し訳なさそうに微笑みかける)

誰もが奇異な視線で看板、そしてスレイルを見つめる。
そんな視線に頭を掻きながらスレイルは弁解した。

スレイル:「いや、さ…俺も結構恥ずかしいのねこれ。
      旧ギルドの方が張り切っちゃってさ、まぁ一時の恥くらい我慢してくれ、な!」

シェーン:「今度は何が待っているんでしょうね・・・。」
     <そもそも砦の主やあの魔獣はどこに行ったんだか・・・
     (どこか思案顔で続いて馬車へと乗り込んでいく)

ナーク:「ん~・・。エイラ湖は久しぶりだなぁ~・・・。そうそう、妖魔の動きってどうなってる?エイラ湖までの道のりでの襲撃とか。ちらほら見受けられるんならちょこっとは警戒しないとね。」
(一度背伸びをしてからスレイルに問いかける)

ゼロ:「・・スレイル・・さんですか・・。・・僕は・・ゼロと言います。
・・宜しくお願いします。・・何度かエイラ湖までは・・行った事が?
・・最近は・・どうでしょう?・・物騒な事とか・・無かったでしょうか?」

メルディア:「馬車の旅は楽でいいわ。エイラフォートへの物資を運ぶ便も多いだろうし
       この道は結構平和なのかしら」(スレイルに訪ねてみる)

スレイル:「そうだな、交通面も整備されて以前より行き来が楽になったな。
      警備の巡回のおかげで妖魔の発見も見なくなったそうだ。
      評議会万歳って奴だな。」

ナーク:「そっかぁ~・・・。りょーかい。んじゃ、安全運転お願いねー。・・・・・うりゃうりゃうりゃ。」
(礼を言うと、馬車に乗り込む。座席を確保すると毛布を取り出し、クッション代わりにして座る)

スレイルが挨拶を済ませると、冒険者達は馬車へ案内され千年都市ガウディを発つこととなる。
馬車は馬二匹が引き、そして比較的頑丈な造りである。冒険者と一緒に食料や何か大きな物が積まれている。

ナーク:「出発~。竜を見つけて何をしよー。」
(謎の言葉を発し、いけーと人差し指を天井にびしぃ!!とさす)

整備された街道を馬車が闊歩する、速度はやや遅めだが特に揺れたり跳ねたりすることもなく快適な旅路になるだろう。
空も冒険者達を歓迎するように暖かな日差しを差し向けている。
そんな道中。

フィア:「エイラ湖まではかなり距離があるんでしょうか。
     スレイルさんは、行かれた事が?」
    <もし、エイラフォートの方の状況を知っている人なら、噂の話を聞きたいところですが・・・
    (荷物を引き寄せ、失礼にあたらない程度の好奇心を持って相手の身なりや仕草を観察する)

フィア:「・・・ギルドの方・・・ではないですよね?
     わたし達と同じようにエイラ湖の方までの輸送をギルドから請け負われた・・・?」

スレイル:「そうだな、こっからのルートは宿場町を経由して目的地に着くのは大体十日って所だ。
      一週間で宿場町に着くからそれまでこの馬車で我慢してくれ。」
     
スレイル:「あぁ、俺はヨトナ村とガウディの荷物運搬を仕事にしているからエイラ湖は何度か見たことがあるぜ。
      ギルドの依頼ーっちゃ依頼なんだが、あそこのおっちゃんは俺の知り合いでな。
      今回は貸しってことでお前さん達を乗せることになったのさ。」

メルディア:「そういえば、竜を見たらしいっていう話だけど見たのはヨトナ村の人なの?
       もし知ってるなら知りたいんだけど」(スレイルに訪ねる)

スレイル:「見たのは修繕工事している野郎だったかな。基本ヨトナ村の連中は城には寄り付かないし
      霧が出てからはほとんど行こうともしなくなったな…。」

やや沈んだ声で答えるスレイル、表情こそは見えないがその背中は丸まっており少し寂しそうに見えた。

ユーリ:「…」
    (警戒するかのように周囲を眺めている)

目に映る光景は秋、道中見かける木々は黄や紅に染まっており、道には鮮やかな色彩が広がっている。
馬車から見える光景はさながら馬車という額縁に収められた絵画のようだ。

メルディア:「そういえば霧の発生範囲をギルドで教えてもらったんだけど・・・」(参加者達と情報交換を行う)

ゼロ:「・・・・。」
<・・前回は・・遺跡調査で・・浮ついていましたが・・今回は・・・。
・・一体・・霧の原因は・・・・・。・・白銀の・・・・・。
(馬車内へと吹き込む風に目を細めて、遠くに視線を向けたまま思案)

白銀、これが一体何を示すのか。
果たして白銀の名を冠する者がゼロと相対するのだろうか。
誰も答えられる者はなく、馬車はただひたすら街道を進んでいく…。

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第二話

ゼロ:「・・宜しくお願いします・・。・・シェーン・・でしたよね。
・・エルとは親しくしてもらっているんですよ。・・良いヤツですよね。
・・最近見ないけど元気ですかね?・・・・・・って・・ご一緒するのは
・・初めて・・ですよね・・?・・お互い・・頑張りましょうね。」
(なぜかシェーンに気を遣って、いらぬ事まで話したり)

シェーン:「...いい眺めですね...。」
     <ほとんど危険はなくなったとは言うけれど...>
     (景色を楽しみつつも、時折何か不審な様子がないか窺う)

シェーンに話しかけるゼロ。
対するシェーンの意識は何処か、周囲に居るであろう脅威へと向けられていた。

ナーク:「・・・くはぁ~・・・・・・・・・・・・・・。しっかし、景色はとってもいいんだけど残念なことに退屈・・・だねぇ~。いい景色も見飽きるとね~・・・。」
(ふぅ~・・・・とため息をついて外の方をぼぉっと見ている。早速飽きた模様)

馬車を走らせてから5日ほど経っただろうか、
ガウディの姿はとうに見えなくなり、馬車は一本道をひたすら闊歩している。
辺りには小川に森林部、草花が風に揺られ何とものどかな風景だろうか。

ナーク:「ん~~~・・・・。ま、何ごともないことを祈るしか・・・だねぇ~・・・」
(というと、帽子を目深に被り仮眠を取る)

心地よい眠気がナークを包み込む…
馬車はまるで揺り篭の様、ナークは安らかな眠りに誘われる。

ゼロ:「・・スレイルさん。・・・湖と・・近くのヨトナ村は・・
どれだけ離れているのでしょうか・・?・・日帰り出来そうな位の
距離に・・ありますか・・・?」
(馬車を御しているスレイルへ微笑で声を掛け)

スレイル:「そうだな、ヨトナ村に行く方法は二つある。
      一つは城へ向かう道に分岐があって、そこから村へ行くルートだ。
      こっちは歩きだと昼頃出て夕暮れ前には着くだろう。
      もう一つはエイラ湖から森を抜けて直に村へ行くルート。
      こいつはルートといえるもんじゃないな…土地勘がある奴が居れば
      歩きで昼過ぎには着く事ができるが、一度迷うと中々森を抜けることができなくなる。
      霧のせいもあって下手すりゃ遭難することになるな。」

ゼロ:「・・・そう言えば・・。・・スレイルさんは・・
ヨトナ村で荷物を降ろしたり、積み込んだりとされる時・・
向こうでのお知り合いがいらっしゃるのでしょう・・?
・・・その方のお名前を教えて頂いても?・・もし村を
訪れた際には・・その方を訪ねてみようかと思っている
のですが・・・。」
(ふと思い出したように、スレイルに問いかける)

スレイル:「俺はそんなに村の連中と親しいわけじゃないな。
      まぁ村に行くんだったら村長がいるから最初に挨拶しにいくといい。」

フィア:「そうですか。・・・では、とりあえず、あちらについてからの情報収集ということですね」
    (頷きを返し、毛布を取り上げるとあっという間に眠りに入る)

それにしてもこのエルフ達、スヤスヤである。

ユーリ:「…砦周辺の野営地と…ヨトナ村…?…だったか…
      …徒歩であればどれほどの時間が掛かる…?
      ……霧から外れるほどの距離か…?」
     (ヨトナ村と野営地までの距離や方角を尋ねる)

スレイル:「んー・・霧から外れる、か。
      残念だが森一帯は霧に覆われている物と思ってもいい。
      逆に言うと森の境界線ギリギリまで霧があるんだ。」

意味深な言葉を残すスレイル、それ以上言葉は続けず昼の陽気の向くまま手綱を握っていた。

ユーリ:「…湖への風向きは決まっているか…?
      …霧は風を受けても全く動かなかったのか…?」
     (随分と長く黙考した後、静かに尋ねる黒髪男)
     <…湿った風が低温の湖上に流れ続ければ…風上とやらも怪しい…か…?>

スレイル:「風向き、か。
      基本は白竜山脈から吹き付ける乾いた風だな。北から吹いてくる。
      まぁ全部が全部北から吹いてくるわけでもないし、ここ最近の事情は着いてみないとわからないぜ。」

メルディア:「すっかり冬の空ね。灰色で重い・・・」
(周辺の様子に気を配りながら何かあれば動けるように待機し
ておく)

そう、メルディアの言う通り昼間までは柔らかな日差しが差し込んでいた空が
夕暮れになる頃には雲が空を覆い気温が急に下がるのがわかる。
季節は着実に、秋から冬へと歩み寄っていく。

日はあっという間に闇に消え、世界を黒で染めようとする…夜である。

ゼロ:「・・エイラへ続くこの道・・。・・精霊達は・・落ち着いている
のでしょうか・・・・。」
<・・霧の精霊・・全てを白に・・覆うのでしょうか・・?
・・・闇も・・光も・・・自分すらも・・・・・。>
(独り言を呟いた後、目を瞑ると両耳に集中し精霊との交信を行う)

精霊:「……」

精霊の応答はない。
闇を駆け抜けるように風の精霊が颯爽と抜けていく。
後を追うように緩やかな風が吹いた…。

シェーン:「今日はここまでですか...えっと、まずは火を...。」
     (野営地につくと馬車を降り、野営の準備にとりかかる)

フィア:「・・・見張り分担は任せます。わたしは、言われた通りに。」
    (信頼を込めた瞳で、静かに微笑み、手際よく食事の支度に取りかかる)

シェーン:「このまま朝まで何もなければいいんですけどねぇ...。」
     (焚き火の傍に腰を降ろし、周囲の警戒を始める)

スレイル:「そうだな、もうじき動物達は冬眠の時期に入る。
      今は腹を一杯にする為走り回ってる時期だから俺達も気をつけないとな。
      油断してたら熊の胃袋に入っちまう。」

冗談じみた口調でスレイルが薪を放り込む。
何処からか狼の遠吠えが聞こえてくる、冗談ではない。

メルディア:「闇は本来安らぐために黒くあるもの。それが白
いとなったら中にいる者たちはどんな者たちであれ平穏を奪わ
れていそうだけど」
(消え入りそうな笑みを浮かべて答えながら、周辺の音や気配
に気を配っておく)

ナーク:「うぃ~・・・っしょ。見張りだ見張りだ~。キアイいれていくぞ~。」
(装備一式を確認すると周囲に意識を配って敵の気配を察知してみる)

ユーリ:「…」
     (一言も発さず、周囲を見張っている)

ふと、ナークは森林の奥にある双眼と視線がぶつかる。
白く光る眼は視線を交差させると踵を返し森の奥へと入っていった…


フィア:「よどんで、動かない白い闇・・・
     どんな生き物が白銀の霧の仲にいるんでしょうね・・・」
    (野営の火を見つめながら、呟くように隣に声をかける)

隣には焚き火から出た火の粉が中をクルクルと回っている。
笑っているようにも思えたが判断する間もなく火の粉は闇へと消えた。

途絶えることの無い炎、それは野生にとって脅威であり、
人に取っては外敵から身を護る為の盾であり、矛でもある。
冒険者達の見張りの成果もあり、獣達は馬車へ近づくことができなかった。

・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・

そしてガウディ出発から一週間が過ぎる頃、ようやく宿場町に辿り着く。
宿場町ディールス、砦修繕工事の影響もあり街は人で栄えている。
冒険者達はここで一泊し、翌日エイラフォートへ向けて出発することとなる。

ディールスの施設には宿屋、酒場、道具屋、武器屋などが建っており、
商人や冒険者、雇われ人など様々な人が行き交っている。
スレイルは宿屋の厩舎で馬の世話をしているだろう。

第三話

昼前に宿場町ディールスへ到着した冒険者達、
各自思いのままに街を歩き回る…

酒場ではシェーン、メルディア、ナークの四人が思い思いの行動をとっている。

*************** シェーン ***************

シェーン:「こんにちは、エイラフォートの修繕工事をされてる方です...ね
?あちらは濃霧で少し厄介な事になっていると聞きましたけど...作業の進み
はどんな具合です?」
     (酒場で軽食を注文後、修繕工事関係者らしき人物を見つければ話し
かける)

胡桃黒パンとラムの燻製を齧りながら作業着を着た男二人組みに話しかける。
二人はオークのソテーをもごもごと食べながら話す。

男A:「あ?修繕工事か。 そうだな、霧のせいで外装が乾きにくいわ
    視界が悪くて足場が危険だったり…まぁ良くはねえな。」

シェーン:「...その霧が出てきた時ってどんな様子だったんでしょうね?気
付いたらすでに霧に覆われていたのか、何か前兆のようなものがあったのか..
.。」
     (色々状況を想像しつつ、尋ねてみる)

男A:「前兆、か。俺は発生当初に居なかったからよくわからんが
    聞いた話じゃ山で霧が出ると同じように視界が悪くなったって話だ。」

男B:「あんたらも冒険者ってやつだろ?あの霧何とかしてくんねぇかな。
    中には竜を見たって物騒なこと言うやつもいるし落ち着いて作業ができねえよ。」

シェーン:「そういえば、霧の中で竜を見たとかいう噂も聞きましたけど...
最近、他にも何か変わった事ってありました?」
     (ワイングラスを手の中で遊びながら尋ねる)

男B:「変わった事は正に濃霧そのものじゃねえか。
    …他に、はそうだ!森の中でガキが走ってたのを見たことがあるぜ。
    ヨトナ村のガキかもしれないが、霧も出て危ないってのに親は何をしてるんだろうな。」

シェーン:「...そうですか、色々お話聞かせていただいてありがとうござい
ました。大変みたいですけど、作業頑張ってくださいね。」
     (軽く会釈し、相手を見送る)

男A:「おう、あんたもくれぐれも気をつけろよ。竜なんて御伽噺にしか聞かないが
    見たってやつは見た瞬間気絶したくらいだからな。」

男達は食事を取り終えると街を出て行った。

・・・・・・・・
・・・・
・・

*************** メルディア ***************

メルディア:「さて、まずは一杯と。火酒とおつまみをいただ
ける?明日にはかの幻の城の方に出発しなくちゃいけないから
いいお酒をお願いね」
(店内の様子をざっと見回し、店員に注文をしながら適当な席
を探す)

店子:「はい、それでしたらこの『芋焼酎ディールスリターンズ』がオススメですよっ」

オークソーセージのカリカリ焼きと共に出される芋焼酎リターンズ。
パリッと香ばしくややピリッとした味のソーセージ、
そして芋焼酎ディールスリターンズ。飲めば喉が焼けて下手をすればむせてしまうだろう。
しかし体が熱くなると同時に喉に素朴な甘みを感じる焼酎…これはいけるかもしれない。

辺りを見渡すが飲んだくれやしけているような客は居なかった。
皆わいわいと景気の良さそうな表情で飲んでいる、実に賑やかだ。
メルディアは暫しその空気を楽しんだ…

【Memory】芋焼酎ディールスリターンズ!
銅貨5枚を支払った。

・・・・・・・・
・・・・
・・

*************** ナーク ***************

宿場町ディールスに着いたナークは皆と別れた後一人街道を歩いていた。

ナーク:「ン~~・・・・・・・・・・・・っと、久しぶりにまともなベッドと食事だねぇ~。情報収集・・・は、後でいいか。」
    (とりあえず、座れそうな場所にちょこんと座って空を眺めながら周囲の噂話やら雑談やらに耳を傾ける)

今日は風もなく穏やかな陽気だ。
空気はもう冬間近でヒヤリとしているが、それを差し引いても日の光は暖かい。
街では荷馬車や冒険者で賑わっているが、中でも防寒具を売る声が大きい。
そう、もうすぐ冬なのだ。

小腹が空いたか酒場へ寄るナーク。

ナーク:「・・・・っと、お邪魔するよー。・・・よっと。こっちに適当に食べるものと水お願いねー。
     ・・・ねね、私ガウディから来たんだけど。こっち方面で最近面白い話とかビックニュースみたいなのない?
     馬車にずっと揺られてるから退屈なんだよねー。」
(酒場に入り、カウンター席に座って注文を告げる。注文の品が出たら、それを食べながら店主に面白い話やら大きな話題やらがないか尋ねる)

親父:「おう、めんこい嬢ちゃんだな! ほらよっこいつぁおまけだ!」

水と一緒に出されたのは胡桃パンのハニートースト。一齧りすると口の中でまったりとした甘さが広がる。甘い。甘い。

店子:「うちのお父さんがごめんなさい、最近特にテンションが高くて…。
    そうですねー大きな話といえばやっぱり北の濃霧と竜の話かしら。
    そうそう、一昨日辺りに千年都市ガウディの方から竜の討伐隊が来たんですよ。
    凄かったですよー!大人の男性くらいの大きさの剣を持ってたり、大きなボウガンや棍棒を担いでいたんですからっ
    あれなら竜も倒せそうですよね、ねっお父さん!」

この親あってこの子ありというか、テンションの高い親子である。

・・・・・・・・
・・・・
・・

*************** ゼロ ***************

一人街道を歩くゼロ。馬車の停留所らしき広場までやってきた。

ゼロ:「・・以前と変わらず・・賑わい・・活気に溢れていますね・・。
    ・・・さて・・人の賑わっている所には・・良く・・流れていると
    思っていましたが・・・。」
    <・・音楽のようなモノが・・流れてくれば・・一番分かりやすいのですが・・。>
   (変わらぬ町並みに顔を綻ばせつつ、人通りの多い広場を目指して足を進める)

青年:「おお我が剣よ! この世界を霧で覆いつくす悪しき竜を討ち滅ぼさん!」

リュートを弾きながら声高らかに謳う青年がいる。
詩の内容からして濃霧と竜の話だろうか。

ゼロ:「・・こんにちは・・。・・出来れば・・一曲お願いしたいのですが・・。
    ・・そうですね・・・最近のエイラフォートの話を御存知ですか?・・
    白銀の霧の中に・・姿を潜めているとか・・。
    ・・それに関連した・・・詩など・・お聞かせ願えれば・・・。
    ・・詩以外でも構わないのですが・・白銀の・・霧に関する伝承など・・
    お聞きした事は・・?」
    (微笑みながら懐から1Sを相手の方へ差し出しながら、自分の希望を伝え)

青年:「おお魔術師よ!貴殿の願いは遠い霧の彼方へ…
    白銀は竜の餌食となりて永遠に見えることはないだろう!
    しかし案ずることなかれ
    竜を討伐せし勇者達が霧を晴らさんと、人々の願いを適えに立ち上がる!
    朝焼けを受け、白銀に煌く水面を、水面に栄える城を取り戻さんが為にも!」

リュートを激しく弾いた直後、まるで時が止まったかのように演奏と青年は止まる。
ガヤガヤと観客が話し始めたその時!大声で青年は大衆に呼びかけた。
リュートの音色と共に勇者を讃える詩は続いている…ゼロのキーワードを巻き込んで。

・・・・・・・・
・・・・
・・

*************** ユーリ ***************

ユーリは一人道具屋に居た。食料や炭をカウンターに並べている。

ユーリ:「…保存食と燃料を7日分買いたい………湿気に強ければありがたい…」>店主
     <…足りぬか…あるいは全くの無駄になるか………あぁ、霧の中だったな…
     (注文し、少し考えた後、一言補足)

店主:「あいよ、そいじゃ7日分で…銀貨3枚、銅貨50枚って所ネ。
    特別に麻布に巻いといてやるよっ こいつならまぁ燃料を無駄にするこたぁ無いと思うよ!」

炭に麻布を巻き、更に大きな袋に詰めて渡される。

ユーリ:「…エイラ湖を囲む森の地形を聞きたい…
      …後は…ここ以外に街道は通っているのか…
      …森の外周を一巡するのに何日掛かるのか…?」
     (森とその周辺について聞き込み)

店主:「んー、わたしゃ詳しく知ってるわけじゃぁないけどそれでもいいかい?
    確か森はエイラ湖の周りを囲っているねぇ。あぁでも城へ続く道は切り開かれてるから大丈夫よ?
    森の外周は正直わかんにゃ。多分白竜山脈に当たるから外を回ろうっていうのは無理かもわからんね。」

ユーリは銀貨3枚、銅貨50枚を支払い一週間分の食料と燃料を手に入れた!
(今はミッション内用アイテムとして処理しておきます。)

・・・・・・・・
・・・・
・・

*************** フィア ***************

フィアは一人街道を歩いている。馬車や冒険者、商人などが行き交っている。

フィア:「・・・・・・・・。」
    <冒険者も、・・・意外なことに、旅人もいますね。エイラフォートに近いのであれば、
     もっと漠然とした不安感や危機感のようなものも感じるかと思ったけど・・・?>
    (のんびりと町中を散策する風情で、商店や露店を覗き込みながら歩いていく)

フィアの懸念する事も確かに最もだ、現にちらほら街の警備で巡回している自警団を見かける。
しかし自警団の顔もガウディの警備員と比べ活気に満ち溢れている…街が賑やかだからなのだろうか。
そんな中、露店商が地面に天幕を敷き道行く人に声をかけていた。目に留まったフィアはつられるように露店商へ歩み寄る。

フィア:「・・・こんにちは。ちょっと見せてもらいますね   
     わたしはガウディから来たんです。これでも薬師なんですよ。
     今回は、ちょっと頼まれごとで・・・。こちらは、ガウディよりも寒いですね。
     あちらではではあまり見られないものもあるようですね・・・。」
    <ガウディから離れて一週間・・・この辺りで取れる薬草っていうと・・・>
    (柔らかく微笑み、さりげなく並べてある品を手に取り、物や値を確認していく)

工芸品やタペストリー大の装飾が施された天幕などが並べられている。
薬草といった類は置いてはないが、二つ干からびた木の実のような物が置かれている。
臭いはややきつめだが、どうやらこれは服用する為にあるものらしい。

フィア:「・・・・これを、頂いていきましょうか。
     これはどこで採れるんです?・・・ああ、不躾な常識破りをするつもりはありません。
     いつでもとれるものですか?希少なものでなければわたしも採取したいところですが・・・。」

商人:「おう姉ちゃん!中々目が肥えてるねえ。
    そいつは白竜山脈の獰猛な熊…ホワイトグリズリーのお宝さ!
    それはそう易々と手に入るものじゃねえ、狩人が命を賭して手に入れた言わば勲章みたいなもんだ。
    だがしかぁし!そいつを食べれば瞬く間に全力全快オールナイトフィーバー…
    こいつは堪らないと思うが…どうだい姉ちゃん!こいつを銀貨10枚で買わないか!」

フィア:「・・・ああ。全く話し込んでしまいましたね。
     お邪魔しました。これで失礼します・・・。」
    (やや慌てたように声を上げ、会話を切り上げるとローブの裾を押さえ、丁寧に一礼する)

ホワイトグリズリーのお宝を買ったかどうかはまた別のお話、
そそくさと慌てる様にフィアは去っていった…。

・・・・・・・・
・・・・・
・・・
****************************************

夜…各自集めた情報を報告しあい、翌日からまた馬車の旅となる。
皆はもう寝ているだろう…しかしナークは目が冴えていた。

ナーク:「ん~・・・・・・。もうちょい時間あるかなー・・・。あっちがお城の方面だねー。」
(エイラフォートのある方角に向くとそっちの方向の精霊の気配やら種類・精霊力の濃度なんかに違いがあるか精霊感知を行ってみる)

向いた方向には窓、宿は二階で下を見れば明かりが連なっており人の足は止まらない。
耳を澄ませば一階の酒場の喧騒も聞こえてくる、どうにも感知が上手くいかなかった。


翌日、馬車も食料の補給を済ませエイラフォートへ向かう。
馬の調子も良く、このペースなら二日で砦前に着くことができるだろう。

ユーリ:(以前馬車で聞いたことを思い返し、しばし沈思)
     <…霧と森の境界は同一…
      …ファルクスの時代から森の形が変わらぬ筈がない…
      …今の森を見てなければできないこと…か…>
     「…霧の境界線の前で一度止まってもらえるか…?」>スレイル、ALL

スレイル:「あ?…あぁ、止まればいいんだな。」

首を傾げ承諾するスレイル。
エイラフォートへ着く予定日…止まった場所は道の分岐地点。
一本は道に入ればすぐに霧に包まれるだろう、目と鼻の先が白で覆われている。

もう一本は霧に覆われておらず、目を凝らせば小さいながらも建物が見えるだろう。
恐らくあれがヨトナ村だ。

スレイル:「この分岐がエイラフォート、ヨトナ村を分ける道になる。
      どうするんだい?俺はこのまま砦に行かなきゃならないが
      村まで行くっていうならここで降りて向かった方が懸命だぜ。」

第四話(城・湖 チーム)

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城と村と分かれる分岐点で馬車を止める。
城の方角を見る。道は途中白で遮断されており前を見ては進めないだろうと思う程の濃霧が立ち込めている。
馬が鼻を鳴らして体を奮わせる。寒いからなのか、それとも―――。

ユーリ:「………」
    (霧の境界面を歩いて不審なものがないかを確認)

ユーリは霧が境界線よりこちら側…街道側へ進行してきていないことを確認した。
霧は微々たる程度だがゆっくりと、東から西へ動いてるのがわかる。
濃霧の規模が大きい為その動きが移動によるものか停滞しているものかはわからない。

分岐する道に対し、二手に分かれ調査をすることにした冒険者達。
メンバーは次の通りだ。

城・湖チーム:ユーリ、シェーン、ナーク
村チーム  :メルディア、ゼロ、フィア

ユーリ、シェーン、ナークは馬車に乗り、濃霧の中に身を投じる事となった。
メルディア、ゼロ、フィアは馬車を降り霧のない道を進む事となった。

**********【城・湖 チーム】**********

道中までの速さとは比べ物にならないくらい遅い速度で馬車は進む。
馬を走らせるというより歩かせるといった表現の方が正しいだろう。
しかし走らなくて正解である。
この城へと続く道は森を切り開くことによって作られたもので
未だ木の根が残っていたり凸凹があったりなど走るには良い環境とは言えない道である。

スレイル:「遅いた思うが我慢してくれ、馬に転ばれて帰りが遅くなるよかましだろ?」

手綱を握るスレイルが苦笑する。首には厚手の布を巻いており、ガウディを発った時よりも服装が暖かそうだ。

シェーン:「......」
     <さて...色々目撃情報はあるけれど...>
     (霧の中を進む道中、周囲から不審な物音や気配がないか警戒する)

車輪が回る音、馬の歩く音、ブルルッと馬の息遣いが聞こえる。
不気味な程他の音はない…そう、鳥の囀りさえも。
もし一人で歩いていたなら孤独を通り越して身の危険を感じただろう。

そうして馬車は森に挟まれた道を抜ける。急に周囲の気温が下がったような気がした。
馬車が止まる。スレイルが振り返りニヤッと笑みを浮かべ言葉を紡いだ。

スレイル:「…着いたぞ、長旅ご苦労だったな。
      ここが対妖魔軍最前線を守る予定となる要塞、エイラフォートだ。」

濃霧の為全景を見る事はできないが、湖にゆらりと巨大な影が浮かび上がっている。
恐らく城なのだろう。

スレイルが馬車から降りると城の方から二人の男が近づいてきた。
一人は屈強な体付きの男、190cmはあるであろう体格に、
この寒空の下だと言うのにも関わらず半袖で寒そうな格好をしている。
もう一人はほっそりとした体格で背中まで伸びているだろう長い栗色の髪を後ろに束ねている。
右目には眼帯をつけており、口の周りに髭を生やしている。

眼帯の男はスレイルの顔を見るなりニカッと笑って背を叩いた。

男:「ようスレイル、久しぶりだな!物資は無事だろうな?」

スレイル:「大丈夫に決まってんだろ、何せ今回は優秀な護衛がついていたからな。
      紹介しよう、こいつはガータン。このエイラフォート修繕工事の責任者だ。」

ガータン:「おう、聞いた話より大分人数が少ないが…まぁ調査の方をよろしくな。
      後ろの奴は付き添いだ。主に外装の修繕担当をしている。
      聞きたい事があれば俺達がわかる限りの事を答えよう。」

付き添いの男は小さく会釈をする。

シェーン:「すみません、冒険者ギルドの依頼でこの霧の原因調査に来た者です
が...。前情報で竜を見た方がいると聞いて、後でお話を聞かせていただきた
くて...今こちらにはいらっしゃいますか?」
     (近くで野営をしている工事関係者がいれば尋ねてみる)

ガータン:「竜、か…俺もついこの間までは竜なんて幻想だの見間違いだの思ってたんだがな。
      今とっておき詳しい話が出来る奴等が砦にいる。
      …ま、知ってるかもわからねぇがあんたらと同じ冒険者だな。
      もう帰ろうとしているみたいだから遅れないうちに聞きにいくといい。」

舌打ちをするガータンの指す冒険者、冒険者ギルドから雇われた面子だろう。
ガータンの表情に蔭りがあるが何かあったのだろうか。

シェーン:「そうですか...ありがとうございます。あ、ところで...
      道中の宿場町で他の工事関係者の方から、森の中で子供を見たとも聞いたんですが...。
      どんな子だったか...見かけたことあります?」
     (ふと思い出したように質問を追加する)

ガータン:「ガキ?…あー、前居た奴等がそんなことを言ってた気もするが
      一蹴して仕事させてたな。
      悪いがガキの事についてはわからねぇ。そっちの兄ちゃんは何かあるか?」

ユーリ:<…まぁ、一応聞いておくか…>
     「…水上の移動手段はあるか…?
      …居るなら操船できる人物も教えていただきたい…。」
     (湖を眺めた後、質問)

ガータン:「あぁ、割と大きめな船がある。エイラ湖調査でも使われた奴だ。
      必要ならすぐにでも用意させよう。…操船はそうだな、ゴンザ、お前やれ。」

ゴンザ:「マジッすか!?ちょっと待ってくださいよ、外装の指揮は誰が」

ガータン:「俺がやるよ、だからお前は湖出る時船主な。」

きっぱりと言い放つガータン、ゴンザと呼ばれた筋肉質の男はしょぼんと肩を落とした。
見かけによらず気が弱いのかもしれない。

ガータン:「しかし、お前さん達二人で調査か?ギルドもやけに人員ケチってんだな。」

ガータンがそう零す、…二人?

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・

ナーク:「ほっほぉ。霧・・・だねぇ。懐かしいっちゃ懐かしいねー。
     ちゃかちゃかっとキャンプ立てるか~。この先ぐらいでいいんだよねー?」
    (ちゃっちゃかと湖の方へ進むと適当な場所でキャンプ設営開始)

キャンプセットを用いてテキパキとテントを張る。森の近くに立てた為風も強くなく吹き飛ぶ事はないだろう。

ナーク:「ふふ~ん・・・っと。枝枝えだー。~♪~~♪」
    (鼻歌なんぞ歌いながら焚き火用の枝などを拾っている)

霧の影響か、落ちている枝はどれも湿気ていた。
火を起こすにもそれ相応の労力が要るだろう。
枝の束はテントの横に置かれる。

ナーク:「秋といえば・・・・・・・・・・・・・・・。食材探しだー!!」
    (枝をキャンプまで持ち帰ると、再び森に分け入って食べれそうな木の実や野草を発見したらどんどか拾いにかかる)

木の実はちらほら落ちているがどれも実が小さく、成長は芳しくないようだ。
野草に関しては季節や濃霧の影響もあり見かけることができなかったが
木の実はヒシ、ギンナンの実を拾う事ができた。

ナーク:「んで、水水ー。・・・るるるー。あれから、変わったかなー。」
(キャンプセットの中から飯盒を取り出して湖に向かい水を汲む。汲み終わったら湖畔に腰を下ろして精霊感知を行う。)

遠くからスレイルが呼び掛けているのがわかる、ユーリとシェーン、スレイルの近くには二人の男が立っていた。
振り返り戻ろうとした時、気付く。

湖の周辺だから当たり前な水の精霊、いや土の、風の精霊達の濃度が濃い事に。
以前希薄だった精霊力も今では満ち溢れているかのように感じ取れた。

##################################################

ユーリ、シェーン、ナークはエイラフォートへとやってきました。
君達を出迎えるのは修繕工事責任者のガータンと付き添いのゴンザ。
彼等曰く、竜の重要な目撃者は今砦内に居て帰り支度を進めているらしい。
他にも湖へ出る為に船と船主を用意してくれるようだ。
冒険者は全員で6人だという話をスレイルがする。
ガータンもなるほどと頷き、伝書鳩を持ってくると村の方角へ飛ばした。
ナークは自由気ままに野営を楽しんでおり、スレイルから白い目で見られる。

冒険者達と共に乗せていた物資は修繕工事に必須だったものらしく、そそくさと他の従業員達によって運ばれた。
スレイルは暫く砦に滞在するというが…

第四話(村チーム)

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城と村と分かれる分岐点で馬車を止める。
城の方角を見る。道は途中白で遮断されており前を見ては進めないだろうと思う程の濃霧が立ち込めている。
馬が鼻を鳴らして体を奮わせる。寒いからなのか、それとも―――。

ユーリ:「………」
    (霧の境界面を歩いて不審なものがないかを確認)

ユーリは霧が境界線よりこちら側…街道側へ進行してきていないことを確認した。
霧は微々たる程度だがゆっくりと、東から西へ動いてるのがわかる。
濃霧の規模が大きい為その動きが移動によるものか停滞しているものかはわからない。

分岐する道に対し、二手に分かれ調査をすることにした冒険者達。
メンバーは次の通りだ。

城・湖チーム:ユーリ、シェーン、ナーク
村チーム  :メルディア、ゼロ、フィア

ユーリ、シェーン、ナークは馬車に乗り、濃霧の中に身を投じる事となった。
メルディア、ゼロ、フィアは馬車を降り霧のない道を進む事となった。

**********【村 チーム】**********

スレイル達と別れ、三人道中を歩んでいく。
道中霧は全くかかっておらず、横を向くと森一体が白みがかっている。
実に気味悪い光景だ。

メルディア:「流石にこの外套も寿命かしらね。毛皮が手に入るならそれを加工するのもいいかも」
       (すり切れた外套を羽織り直しながら周囲に気を配る)

そういえばこれから向かうヨトナ村の近くには白竜山脈があるという。
獰猛な獣が居る事で知られている白竜山脈であるが、だとしたらヨトナ村には狩人がいるのではないか?

フィア:「・・・・消える・・・んですね、白い霧に。
     さて・・・ヨトナ村ですね。まずは、村長さんにご挨拶して、それから・・・。」
    (分かれた仲間の向かった方を振りかえり、
     精霊たちの声に耳を傾けて微かに不安げな面持ちになる)

精霊達の声は聞こえない。
そう、声にならない。
気持ちが静まらない。
落ち着かない。
胸がざわめく。
気付くとフィアの視線は森の方向へ向けられていた。
意識したわけでもない、何かが聞こえたわけでもない。
何が起こったかわからないが、事実フィアの体は森へと向けられていたのである。

歩き続けて大分経つ…足も疲れ、疲労が体を包み込んでくる頃ではないか。
日も大分傾き夕暮れとまでは行かないが大分日の光は弱くなっている。
洗濯物や布団を取り込むならもう冷たくなっていることだろう。
そのような時間に三人は村に到着した。

ゼロ:「・・村長さんの所に・・行ってきます。
    ・・ご挨拶を兼ねて・・お話しをお伺いしようかと思いますので・・。」
   (村の景色を眺めながら以前と変わりがないか注意深く観察し、村組のメンバーに告げる)

村に特に変化はなく、数件の家が建っており、酪農場が見えたり一回り大きな家があるくらいだ。
ディールスのような活気は村にはなく落ち着いた空気が漂っている。
濃霧は村まで浸食しておらず、村から森をを見ると確認できるくらいだろうか。
羊を連れている二人の男女が通った、ゼロとフィアはすかさず男女を捕まえる。

ゼロ:「・・・以前は子供から・・お話を聞けましたが・・さて・・。
    ・・・・・どうも、こんにちは。・・村長さんのお家を・・御存知ですか・・?
    ・・ご挨拶にお伺いしたいのですが。」
(なるべく笑顔を絶やさないように、見かけた村人に声を掛け)

フィア:「こんにちは。ちょっと聞きたいんですが・・・。
     わたし達、ガウディのギルドの依頼で、湖に発生している霧の調査に来た者で、
     こちらで噂になっている事とか、最近の霧についての話をちょっと聞かせて頂きたいんです。
     お願いします。
     ・・・あと、村長さん?にお会いするにはどちらへ行けばよろしいでしょう。
     ご挨拶をしたいんですが・・・。」
    (にこやかに微笑みかけ、相手の対応を気にすることなく丁寧に問いかける)

同時に話しかけるゼロとフィア
村人の女は男の影に隠れ、男は眉をピクピク動かしながらも返答する。

男:「あんさ何ゆーとるか、霧なんぼそっちゅら見らわかるべ。
   …長のとこだあんの一番てっさな家さ。」

やや聞き取りにくい口調で話す男。
"?"の形状に似た杖を一番大きな家へ向ける。あそこが村長の家なのだろう。

一行は指し示された家、村長宅へ向かう。
村長宅は二階建てで他の家々は一階建て、大きく見えたのは二階建てだからだろう。途中

メルディア:「?」

メルディアは二人の後をついていくが、ふと村長宅の二階窓を見やる。
誰かと目が合った気がしたが、どの窓から見ていたか判断できなかった。

@村長宅
訪ねると初老の男性が迎えてくれる。
毛皮で作られた服を身にまとっており、しかめっ面で家の奥へと案内する。
案内された部屋は大きめな部屋で暖炉がパキパキと音を立てて燃え盛っている。
暖炉の前には大きな揺り椅子が置かれ、そこに年老いた男が座っていた。彼が村長だろう。

ゼロ:「・・こんにちは。ガウディから参りました、ゼロと申します。
    エイラで発生した霧の件で調査に参ったので、ご挨拶に寄らせて頂きました。
    ・・以前もこの村に・・立ち寄った事があるのですが・・変わらない・・良い村ですね・・。
    ・・・・こちらの村では・・霧や白銀の王などに関する伝承や・・昔話など・・
    残っていませんでしたっけ・・?・・もしあればお聞かせ願いたいのですが・・。」
   (村長宅を訪れ、微笑で帽子を取り会釈を向けると、世間話の様に話を続ける)
   
村長:「世辞はええ、お前さん達の事は既にしっとる。都市から派遣されてきた冒険者だということもな…。」

ゆっくりと、しかし重い口調でしゃがれた声が紡がれる。

村長:「…昔、そう幾星霜も前の話になるじゃろうが、この土地一帯はある一国が統治していたらしい。
    それが湖の城というなら、そこに王がいたのではないかね。
    …伝承のことなど知らん。」

村長:「まさか、とは思うがそこのエルフは伝承や昔話を頼りにここまで来た…と?
    フハハッ!それは傑作じゃの。…ゲホッ」

男:「親父、あまり無茶はするなよ。」

村長:「わかっておるわ…全く、道化もいい所じゃの。
    ……昼過ぎに城の方から文書が来た、城を動かしている者はまだ毛の生えた若造じゃが」

そこそこやりおるのぅ…と呟きつつ椅子から立ち上がり杖を支えに暖炉の前に立つ。
そして杖を地面に一回、音を鳴らすように突くと。

村長:「山狩りをする者にとっても森は避けて通れぬ場所、
    外の者を拒むとは言うてもこればかりは早急に対処せねばなるまいて…。」

フィア:「作業を遅らせているという霧に関連することも勿論なんですが、
     ・・・・お伺いしたい事がもうひとつ。
     急遽、わたし達が森の修繕工事現場へと向かわなければならない場合、
     土地勘がないと、この村から直接向かうのは難しいと聞いています。
     どなたか、頼りになる案内人を紹介していただけないでしょうか?」
    (大方のやりとりが終わったところで、さりげなく付け加える)

エルフの女性の申し出に村長と男は手に顎を当て沈黙する。
嫌そうな、渋ったような表情で固まっており空気が重い…。

子供の声:「ニーディが行くよ。」

突然横から聞こえる声。
村長と話し込んでいて聞こえなかったのか、いつ近づいたのかわからない。
女の子が立っていた。
8歳前後と言ったところか、滑らかな栗色の髪の毛は肩で切り揃えられており、
紅白で彩られた長いローブをまとっている。
くりくりとした茶色の瞳は冒険者達を見つめており、いつの間にかメルディアの外套の裾を掴んでいた。

村長:「ニーディか…確かにお前なら案内することは、可能じゃ…
    だが一日待つのじゃ。 大人が決めることだがんの。」

##################################################
村へやってきた君達を待っていたのは三人の事を知っていた村長、毛皮服の男。
彼等は生活の為濃霧調査の協力をするもいささか非協力的な様子…
文書とは何のことか、ニーディという子は誰なのか、村長は何故幼子に可能と言ったのか…
外の光は既に失っており夜のカーテンが空を覆いつくしていた。
冬に近い秋、夜になると急激に冷え、そのまま野宿でもしようものなら風邪をひくどころではない。
幸いにも協力の一環として村長が家に泊めてくれるとのこと。
明日から調査開始だが…どうしようか。

第五話(城・湖 チーム)

##################################################

**********【城・湖 チーム】**********

ガータンに案内され、砦の中に入る冒険者達。
砦内部は今だ修繕工事の作業員が右往左往しており、至る所に石材、木材などが並んでいる。

シェーン:「私達の他にもいたんですねぇ...。どんな格好の方達だったか、確認のために教えてもらえますか?」
     (ふむふむと頷いた後、冒険者一行の外見について尋ねる)

ガータン:「そうだな…冒険者は三人だ。
      一人は全身鉄の甲冑を身に纏い、背に大人一人分はある大剣を担いでいたな。
      恐らくあれがリーダーだ。
      
      もう一人は骨で出来た兜を被り、鱗で覆われた鎧を着ていたな。
      獲物は最初の奴と同じようにでかい鎚だ。
      
      最後の奴は二人より身軽な服装だったが手に持っている弓はえらくごつくて大きかったな。
      あれはどう見てもヒトや小動物を相手にするような武器じゃない。
      ジャイアントやまたそれに類似した何かを相手にする為の武器だ。」

と答える。
ユーリやシェーン、ナークの武器と比べると随分と大きい得物を扱っているようだ。

そして案内されたのは砦を入ってすぐある部屋、恐らく詰め所なのだろう。
その中には話の通りの装備を着こなした冒険者達が座っている。

ユーリ:「…あんたらがギルドに雇われた冒険者か…。
      …ディールスで聞いた竜討伐隊とやらか…?」
     (冒険者達の武装や戦闘による損傷を視る。)

シェーン:「初めまして、冒険者ギルドから霧の調査のために派遣されて来た者ですが...。
      他にも冒険者の方がいると聞いてお会いしに来ました。...ここへは何のご用事で?」
     <...この方達が『竜の討伐隊』ってやつなんでしょうか...?>
     (ガータンの言う冒険者たちと思われる者に声をかけつつ、彼らの風体をさりげなく確認)

冒険者達の風貌を確認する。
大剣の戦士は、剣は刃毀れやヒビといった類の損傷は見られず、土の汚れが目立つ。
体の方も木々や土埃といったものが付着しているようで、地面を転がったものだとわかる。

鎚の戦士は、鎧のあちこちに鱗の抜け落ちた跡がありみすぼらしい姿になっている。
外傷は特になさそうだが消沈しきった表情をしている。

射手は…弓が大破していた。
弦は切れており、弓のいたる部分にヒビが入りもはや弓が撃てそうにない。
顔には包帯が巻かれており、包帯の間から目が見える。(顔の上半分が包帯で巻かれているものとみてください)

大剣の戦士がユーリ達に向き直り、会釈をする。

大剣の戦士:「あぁ、俺達が竜討伐に来たグループだ。
       ディールスで詩人に話したからな…話が広まったのか。」

ユーリ:「…ガウディで信頼のできる情報が本当に得られたのか…?
     …我等もガウディから来たが…此処に着くまで噂に過ぎぬ情報しか得られなかったが…?」
    <…冒険者ギルドは旧ギルドには無い情報を持っていたのか…?
     …あるいは単なる騙りか…?…まぁ、得られる情報があるならば良し…
    (胡散臭そうに別チームの冒険者達を眺め、問う。)

大剣の戦士:「フッ…あるわけがない。その様子だとあんたも随分と探し回ったみたいだな。
       だが"竜"と見間違う程の物体だ。竜でなくとも巨大な物、生物である可能性は十分ある。
       俺達はでかい奴等を専門に狩るのが仕事でね、
       竜なら名声を得に、他の奴だったらいつもの仕事のつもりで来たわけだ……。」

ガータン:「そう、濃霧調査が本来の仕事のはずだがこいつらはただの狩人だったってわけだ。」

ガータン:「俺は仕事に戻るぜ、何かあったら従業員の誰でもいいから呼ぶといい。」

ガータンがつまらなさそうに言い捨てると、詰め所から出て行った。
この後、シェーンは詰め所に残り、ユーリは詰め所から出てそれぞれ聞き込みを開始する。

シェーンの場合・・・

シェーン:「そうでしたか、私達の方はまだ着いたばかりで...
      調査の上での参考にいくつかお話を聞かせていただきたいんですが...
      ここに来てからどんな行動をとられました?すぐ森の方へ行かれたんでしょうか...?」

大剣の戦士:「あぁ、俺達は竜の目撃場所である湖近くの森林部を探索していた。
       霧が濃くて視界がほぼ0に等しいから音だけを頼りに進んでいたけどな。」

シェーン:「...後、竜について詳しい話ができると現場責任者の方から伺ったんですが...
      何かの見間違えでなく、本当に竜そのものを目撃されたんでしょうか...?
      その時の状況を教えていただきたいのですが...。」
     (少し眉をひそめつつ、竜に出会った状況について尋ねてみる)

戦士は一呼吸おくと両手を組み膝に肘をつき、沈痛そうな面持ちで地面を見る。

大剣の戦士:「あぁ……あれは竜だった、と思う。
       濃霧に紛れてて全部は見ていなかったが、白銀の鱗にスカイブルーの瞳
       額に翡翠色の水晶が埋め込まれているのははっきりと覚えている。
       ……思わずみとれてしまったくらいだからな。」

大剣の戦士:「俺達はその竜と計三回戦った、いや最後の方は蹂躙されただけだったな。
       奴が現れる時は気温が下がる、それが合図だ。
       後は奴に矢や剣が通用しなかった…、斬りかかっても霧みたいに手応えが全くなかったんだ。」

大剣の戦士:「二回は攻撃してすぐに逃げた、だが三回目は不意を突かれてこの様さ。」

戦士は両手を広げる。後ろの二人を指しているのだろう。
竜討伐の冒険者達は結局敗走してきたようだ。

大剣の戦士:「まぁ、少なくとも竜の情報は得られた。ギルドに情報を持ち帰って治療費を稼ぐとするさ。」

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・

ユーリの場合・・・

詰め所を出て従業員に声をかけるユーリ
ガータンからの指示があったのだろうか、従業員の男は快く聞き込みを受け入れた。

ユーリ:「…此処に現地の子供が来たそうだな…
     …ヨトナ村の者は交流を絶っているそうだが…
     …そのときの話を聞かせてもらえぬか…?」
    (作業している者を探して、現地の者との一件を尋ねてみる。)

従業員:「あぁ、森で子供を見るって奴ですか。
     僕もその子供は見ましたね。
     白色のブラウスに藍色のロングスカートを着た10~12歳くらいの子供でしたよ。
     森は危ないからすぐ帰るよう叫んだらそのまま踵を返して森の中に戻っていきました。
     僕が見たのは一回だけですが、他の従業員も同じ感じです。」

ユーリ:<…何れは…妖魔との戦闘で此処に来ることもあるのだろうか…
       …魔法は解らんが…一度視ておくか…>
     (砦の中を眺めてみる。)

聞き込みした従業員の作業を見ていると、従業員が壁に石膏を塗っているが、塗っている箇所に違和感を見つける。
塗っている箇所にわずかだが扉があったような溝が薄く浮き出ている。
そして石膏がその溝を隠すように塗りたくられていった。

従業員:「あぁ、気付きましたか? …えぇ、今塗っている箇所は隠し扉のある場所なのですよ。
     本来脱出用か何かに作られたものらしいのですが、城内戦になった際の手札として隠しておくそうです。
     どういう意図かはわからないのですがガータンさんには何か思うところがあるみたいですね。」


##################################################

第五話(村チーム)

##################################################

**********【村 チーム】**********

宵闇でよくわからなかったが、村長宅は意外に広いようだ。
冒険者達に宛がわれた部屋は二階の三部屋、
客人用なのか一室に簡素な椅子と机、そしてベッドが用意されている。

このまま寝るのもいいが、夜はまだ長い。
冒険者達は各自思い思いの行動を起こしていた。


メルディアの場合・・・・

宛がわれた部屋、そこには女戦士とようj…少女が居た。
不釣合いな組み合わせ、だが暖炉での流れから言えばこうなるのであろうか。
少女は窓から外を見やり女戦士に振り返り笑う。

メルディア:「あなたのようなお嬢さんが案内役を買って出てくれるなんて驚いたわ、
       よっぽどあの森に詳しいのね。
       ところで、ここに来る前、二階の窓からあたし達を見ていたのはあなた?」
       (移動しながらぼんやりした笑みを浮かべて話しかける)
       <不思議な子・・・道案内を買って出た理由も気になるし視線の主がこの子なら何かあるのかしら>

ニーディ:「えへへ、だってこの森は私のお庭だもん。 知らない所はないよ!」

楽しそうに喋る少女。
曰く美味しい木の実がなっている場所。
曰く子鹿と会える場所。
曰く麓の友達と遊べる場所…
言葉は留まる事を知らず、一方的にニーディが話す形になっていた。

メルディア:「そういえば、途中の町で森の中で子供を見たという人がいたのよ。
       ニーディみたいに森に詳しい子がこの村には何人もいるのかしら?」
      (たまに周囲に気を配りながら話を続ける)

ニーディ:「んー、居ない?
      怖がって森に入ろうとする子、あまり居ないし。
      本当は怖くないし、楽しい所なのにねー」

メルディア:「そうなんだ。ところでこの村の大人達は霧のこと、
       というかあの城やあたし達のことに関わり合いたくないみたいだけど・・・
       何か事情があったりするの?」
      (あごに指を当て不思議そうに質問する)

ニーディ:「何でだろう?ニーディにもよくわからない。
      りょーりつがどーだのって言ってたのは覚えてるけど。」

メルディア:「ところで、この村毛皮は扱ってないかしら?
       あたしの外套はもうこんなだから新しいのの材料に毛皮の出物があったら欲しいのよ。
       この霧のせいで猟師さんも仕事になってないのなら品もないかもしれないから
       無理にとは言えないけどね」
      (外套の端をつまみながらニーディに話しかける)

ニーディ:「パパがいつもあったかい毛皮着てるよ!
      パパは村で一番のりょーしさんなのっ 今度私にもまっしろなもふもふをくれるの!」

ニーディ:「…ぁ! ごめんねお姉ちゃん、私ちょっといってくる。ばいばい!」

ニーディが窓に目をやると気付いた様に跳ね上がる。
わたわたとフードをかぶり、手を振るといそいそと部屋から出て行った。

・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


フィアの場合・・・・

部屋に案内された後、フィアは再び暖炉部屋に来ていた。
そこには先程と変わらぬ村長の姿、暖炉の火を見つめているのか揺り椅子に深く腰をかけじっとしている。

村長:「何じゃ…まだ用か?」

振り返らず、ただ疲れたような声でフィアに問いかける。

フィア:「・・・時に、もう少し、お話を聞かせて頂いても良いでしょうか。
     先ほど、わたし達の前であれほどに思わせぶりな事をおっしゃるからには、
     何らかの説明をいただかない事には気になって眠れません。
     ・・・先ほども咳き込んでいらっしゃいましたね。お加減が・・・?」
    (丁寧な口調に、冗談めかした響きを含ませながらも、退く気のない風で一歩進み出る。
     が、ふとした表紙に軽く眉を寄せ、心配そうな表情をのぞかせる)

村長:「……あの話は村の一員に話したものじゃ。お前さんには一切関係のない話。
    それに体は至って正常、診てもらう必要もな―――」

フィア:「・・・わたしは薬師です。冒険者である前に人として。
     村長の貴方に課せられるものがあるように、薬師としてのわたしにも優先すべき事があるのです。
     もちろん、同業者の職域に踏み込む場合は十分に注意をしていますが。
     
     そうですね・・・風邪ならば、暖かくして後は、喉に良いお茶を・・・」
    (誤解しないで欲しい、と、束の間厳しい表情を見せるが、軽く一息ついて表情を和らげる。
     村長の様子をよく観察して、体調が悪いのなら、できる限りの処方を試みようとする)

村長がため息を吐き、しっかりとした足取りで暖炉の前に立ちフィアへ顔を向ける。
杖をついていながらも堂々とした姿勢で病で体を弱めているようには到底見えなかった。
老人の目が細まりフィアを観察する。

村長:「ふぅ、外の人間とやらはこうも強情とはな…
    薬師……と同時に、魔に深い関わりがあるようじゃな。
    …話してみぃ。」

フィア:「今日の昼すぎに城の方から来た文書、とはどのようなものだったのですか?
     何か、新たな出来事が起こったということでしょうか。
     わたしたちの仲間がすでにそちらに向かっているのですが、わたし達の仕事に
     関係があるのは間違いないようです。できる範囲でご説明頂けるでしょうか。」
    <城の責任者・・・名は・・・?>
    (改めて心を落ち着けて考えをまとめ、静かに話しはじめる)

村長:「そうじゃな、お前さん達に関係のある内容じゃ。
    一つ、都市から来る冒険者達に対し協力を要請する。
    一つ、事変の根源は精霊、即ち"調律師"たるわしらに事変解明の助力を要請する。」

村長:「ヨトナの血筋の者は古より精霊に対し深い繋がりを持つ一族
    お前さん達がいう精霊使いのようなものじゃ。
    調律師とは荒ぶる精霊を鎮め、その土地に平静をもたらす者。
    ヨトナの血を強く受け継ぐ者が調律師としてこの土地を統括することになる。」

村長は視線を落とし、皺の多い顔で眉間に皺を寄せて話す。

村長:「じゃが、今はその調律師はこの村に居ない…獣に食われて死んでしもうたからの……。」

フィア:「森への案内者ですが。
     貴方につながる子ですか?まさか、あのような幼い子どもが名乗り出ると思いませんでした。
     この家に住んでいるのですね。わたしの連れに興味を持っていたようですが・・・」
    <あの子ならば可能・・・ということは、どういう・・・?>
    (少女の名を小さく呟き、その響きを確かめるようにして視線を村長に向ける)

村長:「………その死した調律師の娘が、ニーディじゃ。」

そうポツリと零す。
村長はそれだけ言うと暖炉の方へ向き直り、肩を落としてフィアに語りかけた。

村長:「もしかしたら、ニーディには調律師としての力があるかもしれない。
    じゃが幼子には早すぎる…村で護ってやらねばならんのだ。
    …もう娘のような悲劇は起こしたくないんじゃ……。」

・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


ゼロの場合・・・・

村長宅、玄関。
そこには外からやってきたエルフの男性と、毛皮の男が居た。
男は今から外へ出て行く様子である。

ゼロ:「・・村長さん・・・協力して・・頂けるのでしょうか・・?
    このままだと・・こちらの村にも・・いずれ・・尋常ならざる被害が及ぶとおもうのですが・・・。
    ・・・それに・・先程、城からの文書が来た、と言われていましたが・・
    どんな内容だったのでしょう・・。・・城の方にも・・仲間が行っていますので・・心配です。
    ・・・良かったら教えて頂けないでしょうか?」
   (村長の居ない所でそっと毛皮服の男へと声を掛けて、沈痛な面持ちで頷く)

毛皮服の男:「村長は協力する、形がどうであれな。
       文書の中身は言えねぇが簡単に言えばお前達冒険者の調査に協力してくれとの要請書だ。
       
       …あーた、尋常ならざる被害ってのはこの霧の末路のことか?
       知ってるのかい、この霧を。
       
       いや知ってるわけがないな、すまない、今のは忘れてくれ。」

ゼロ:「・・ニーディ・・でしたか・・。
    ・・どうして・・あの子なら・・霧の中でも・・”可能”と・・言い切れるのですか?
    ・・・こちらに来る途中・・霧の中で・・走り回る子供の噂を耳にしていますし・・。
    ・・霧と・・子供・・。何か繋がりがあるのですか?」
   (さらに思い出したかの様に付け加え、相手をじっと見つめて反応をみる)

毛皮服の男:「娘は森で遊ぶのが好きでな、春から夏にかけてはよく近所の子供と森で遊んでいる。
       だが、この時期になると餌を求めて獣達が山から降りて来るから…森には出していないが?
       村長も、ニーディの話を間に受けすぎだ…まだあの子は幼すぎる、森の全域を見ているわけじゃない。」

ブーツの紐を締め直し、玄関に手をかける男。
ふと思い出したようにゼロへ振り返る

毛皮服の男:「あぁ、もう一度言っておくが……この時期の森は餌を求めて獣達が徘徊している、
       そんな危険な所へ娘はやれない。これが大人…いや親の意見だ。」

男は言葉を残し、外へ出て行った。
それを追うように外へ出たゼロ。

ゼロ:「・・・森近くまで来ると・・流石に・・・。
    ・・何が霧をここに留め・・何を霧の中に孕むのか・・・・。」
   (薄暗くなった村から森へと少し足を進め、森へと視線を投げ続けるとそっと集中して精霊達の声に耳を傾ける)

森の向こうからは不安や苛立ち、焦燥の意が伝わってくる。
ゼロの額に汗が浮かぶ…と同時に感知した精霊の中に一つ穏やかな気配を持つ精霊を見つける。
方角は後方上…村長宅の上だろうか?

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第六話(城・湖チーム)

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**********【城・湖 チーム】**********

男勢の掛け声が響く、ハンマーで叩くような金属音、木材がぶつかっているのだろうか軽い音も響く。
砦の補修作業は休む間もなく続けられていた。

ユーリ:<…『あるわけがない』…か…あの連中はここで竜の情報を得た…ならば…。
(竜らしきものを直接見たという従業員たちを探し始める。)

作業員が行き交う中、ユーリは作業員を捕まえては聞き込みを繰り返す。

ユーリ:「…まずは、あんたが何時、何処でそいつに遭ったかを訊かせてくれ…。」
     (目撃した場を質問。複数人目撃者が居るならば時間帯や場所からおおよその行動パターンを探る。)

作業員A:「え?俺は竜なんて見てないぜ。
確かにここに来てからそういう話は聞くけどな。
まぁ遭ったところで金が手に入るわけでもないし遭わないにこしたこたぁないな!」




作業員J:「竜、か…思い出したくないんだけどな。
いいか?俺が話すのはもしかしたら見間違いかもしれないし、気の迷いだったかもしれない。
それを念頭に聞いてくれ。

あれは夕暮れ…より日が落ちてたな。夜だったかもしれない。
俺はその日酒を飲んでて急に用をたしたくなったんだ。
んでちょっと湖までいって…そいつが居たんだ。
こう、ズボンを下ろそうとした時に目の前の湖にでかい影が…
ぁあ!あん時少しちびっちまったじゃねえかっ」

話をまとめるのであれば、湖付近、夕方~夜に目撃することがあるようだ。

ユーリ:<…実際、戦えば返り討ちにされている…しかし、その気がない相手には…?
「…そいつは何かをしているように見えたか…?
     …気付いた事があれば何でも言ってくれ…。
     …それと…あんたが何をしたか、奴が何を返してきたかを教えてくれ…。」
    (遭った時の状況、お互いのやり取りを確認。)

作業員J:「いや、別に…噛み付かれもしなかったし、何もされ…
あいや、そうだ!あいつを見た瞬間風が吹いて尻餅ついたんだよ。
何かするって…あんな奴に何かする方が頭いかれてるぜ。
俺は逃げるしかなかったわ。」

ユーリ:「…そうか、御協力、感謝する…。」
     (従業員に礼を返し、これ以上目撃者は居ないと思えたらシェーンたちと合流。)


ユーリが聞き込みを行っている間、シェーンは詰め所で冒険者達に更に深く話を聞いていた。

シェーン:「なんとか無事に帰ってこられてよかったですねぇ...。
竜に遭遇したのは三回とも別々の場所なんでしょうか?」
    (ボロボロの冒険者たちをやや哀れんだ目で見つつ、質問追加)

大槌の男:「あれは本当死ぬかと思ったね、今まで大猪やジャイアントを仕留めてきたが、
あんなのと比較にならねえ。
確かに見かけたのは毎回違う場所だったが…
そうだな、言うなら湖だな。
森林部にも姿を見かけたことはあるがそれでも湖のそばだった。」

シェーン:「竜はこちらから手を出さなければ積極的に攻撃してこないとみていいんでしょうか...。
三回目に出くわした時、どんな風に攻撃されたのか、
どのようにして逃げてきたのか教えてもらえますか?万が一の参考のために。」
     (腕を組みながら、何か考えている風な表情で質問する)

大弓の男:「あの化け物とやろうってのか、やめとけやめとけ。
命がいくつあっても足りないぜ。
だが同じ冒険者のよしみで教えてやるよ。
俺達は竜を退治するつもりできた、だから最初から襲いかかったわけで。
三回目は…後ろからだったな。
突然金切り声がしたと思って振り返ったら思いっきり吹き飛ばされたんだ。
あぁ、まさか自分がこんなに軽く飛ばされるなんて思ってもなかったな。
そいで木に叩きつけられてこのザマだ…逃げる時は死ぬ思いで逃げてきたから…
すまないが全力疾走としかいえない。」

大弓の男は視線をシェーンから外して項垂れた。

シェーン:「そういえば、森を探索している時に子供を見た...ってことはないです?
作業員の方の間で噂になっていたもので...。」

大弓の男:「いや…見てないな。
これでも狩猟は得意で小動物も見逃さないんだが…見かけなかった。」

シェーンは冒険者達に礼を言うと詰め所から出て外へ出る。
どれくらい砦に居たのだろうか、気付けば日は傾いてもうすぐ夜になりそうだ。
秋冬の夜は早いというが…
外ではスレイルが藁で馬を擦っていた。

スレイル:「お、首尾はどうだい。この霧は何とかできそうか?」

軽く笑う男。馬も釣られたのかブルルと鼻を鳴らした。

シェーン:「スレイルさんは度々ヨトナ村を訪れているんでしたよね?...
どうして村の方々がこの砦を避けているのか、
どうして霧が出てから余計に近付かなくなったのか...
何か心当たりはありますか?」
     (スレイルとの会話の中で、ふと思いついたように話を振ってみる)
     
スレイル:「心当たりか、後者は俺もまだ聞いたことがないからわからない。
だが前者の理由なら聞いたことがあるぜ。
そうだなぁーキス一回で   冗談だ。」

笑ってごまかすスレイル。もしかしたら女剣士からの視線が痛いかもしれない。

スレイル:「簡単に、というかこれだけしか言われてないんだが…
"気が重い"だそうだ。
何で気が重くなるのか聞いてみたんだが、村人もよくわからないらしい。」

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エイラフォートで耳にするは竜?に関する情報…
ガウディでは眉唾ものであったが、ここにきて現実味を帯びてきた存在。
竜でなくてもそれ相応の相手なのだろうか?
…どうやらもうすぐ竜が現れる時間帯らしい。
日は落ち、夜のカーテンが空を覆いつくすこの時間
気温も大分下がってきたようだ。

スレイルの話も気になるところだが…どうしようか。

第六話(村チーム)

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**********【村 チーム】**********

---ANOTHER---

「あ…また呼んでる。」
タタタッと階段を駆け下りていく。
最近はあの子が来る事が多い、何でだろう
「お待たせ…ん?」
あの子とお話してる人がいる。
ううん、お話しようとしてる人がいる…。
何でだろう、いつもあの子は穏やかなはずなのに
あんな風に暖かい気持ちでお話してるはずなのに
それがとても不安になる。

・・・・・・・・
・・・・・
・・


寒空に月がぼんやりと浮かんでいる。
冷たい風が吹き、防寒具がなければ身を震わせることだろう。
そのような舞台にゼロは立っていた。

ゼロ:「・・・・あの霧を見ても・・心配にはならない・・。
・・・貴方は・・一体・・誰ですか・・・?」
<・・この気配は・・・・。>
(穏やかな気配を感じた方向に視線を投げかけ、
その位置に向けて再度精霊交信を行う)

交信を試みるエルフの精霊使い・・・
相手は姿が見えず、光も発しない。暗闇と話しているかのよう
しかし、心なしか気分が落ち着き、穏やかな気持ちになった。


ゼロ:「・・・この状態・・森の精霊達は・・不安や焦りを感じていると思います・・。
なのに・・貴方は・・これが不安には成らないのですね・・。
・・何を・・ご存じなのですか・・。
・・・この村や・・城・・そして・・
この周辺の精霊達を貴方と同じ様に・・
心穏やかにさせてあげる手助けが・・僕に・・出来ないでしょうか・・・?」
<・・・・・・・・何かを知っている・・?・・・・・あるいは・・。>
(相手からの反応を待ち、移動するようであればついて行こうと試みる)

十数秒、ゼロと精霊は互いに何も発することなく沈黙する。
ふと精霊は森の方へ、ゆっくりと気配を移していった。
ゼロも誘われるかのように森へと歩を進めていく。
白い靄がゼロの体を包み込み、遠くからではゼロの姿を目視することはできないだろう。

メルディア:<あれは?>
(外をのぞきニーディの様子をうかがおうとする)

森へ歩んでいくゼロを追いかけるニーディ。
そのような光景が視界に入った。

メルディア:「子供の後を追うなんて、ね」
(ニーディの所に移動しようとする)

部屋を出て階段を下っていくメルディア…
一階の暖炉部屋を通り過ぎる際、フィアと村長が対話しているのを見かけた。
外へ出る。
ニーディが暗闇の中へ入って行くのを見かける。
メルディアも後を追うように森の中へ入っていった。
心なしか冷たい風が森の方から吹いている…そう感じたかもしれない。

・・・・・・・・
・・・・・
・・・

フィア:「ヨトナの血・・・この村の始祖たる者しょうか・・・?
  調律師という知識と技を受け継ぎ、伝えてきた・・・。」
    (静かに呟き、落とした視線をふと村長に戻す)
    <長の娘が調律師?調律師の血筋と長の血筋とは・・・>
    「調律師ということばは初めて聞きましたが、この地の調律師は、
     昔から、この地の精霊を鎮め、この地を守ってきた、というお話でしたね。」

暖炉の薪がパキッと音を立てる。
火の粉が宙を舞い、くるりと円を描いて消えた。
頷く村長、フィアは続けて口を開く。

フィア:「・・・ということは・・・違っていたら申し訳ないのですけれど、
     今回の霧の原因となった精霊は、以前からあなた方にとって馴染みのある精霊ということですか?
     つまり、以前から湖かその周辺に住む精霊たちとヨトナ村の村人・・・もしくは、
     調律師の一族には浅からぬ関係があった。「ヨトナの血筋」と呼ばれる程ですからね。
     そして、前任の調律師の死によって何らかの均衡が破れた、と、考えられるのですが」
    <場所も近いし、「ユトナの血筋の者がこの霧を何とかできる」ことを知っていて
     ガウディのわたし達に依頼をする、というのもおかしい気がしますが・・・
     だとしたら、わたし達に期待されたことは一体なに?>
    (口元に指先を当て、考えながら言葉を紡ぐ)

村長:「そうかもしれぬ、そうでないかもしれぬ…
しかし、調律師が居ないからといって天変地異が起こるわけではないのじゃ。
この地は元より精霊の影が薄い大地…。
荒ぶる精霊を鎮めるということは、その荒ぶる程の力を力の乏しい精霊へ分け与えるということ、じゃからな。」

フィア:「調律師の行う精霊鎮めは、定期的な祀りや儀式のようなものなんでしょうか?
     ・・・前任の調律師が亡くなった事件について、詳しく教えていただけますか?
     獣に食われた、というのは単なる事故なのでしょうか?先ほどのお話では、
     調律師としての仕事の最中に命を落とされたように聞こえましたが・・・」
    (やや首をかしげ、こぼれた長い黒髪を指先で掬う)

村長:「儀式と言うほど仰々しいものではない。
森や山の麓を周り、精霊達の面倒を見てやることじゃ。
鎮める時は自然と精霊達を身に纏うことになるのじゃが
それが獣達を刺激することになるとはおもわなんだ。
己に力を持つ獣程、力ある者が近づくことによって縄張りを守る為に立ち上がる。
…後は、わかるじゃろう。」

フィア:「そうですか。
     どうやら、ヨトナのニーディの力を借りずには済ませられないようですね。
     この依頼におけるわたし達の役割は・・・おそらく・・・?」
    <原因の調査ももちろん入ってはいるだろうけれど、最終的には・・・>
    (途中で言葉を切り、その続きを眼前の相手に委ねる)

言葉が続かない。沈黙が二人の間を支配する。
そして沈黙を破る音

タタタタタタッと軽い足音が廊下を駆けていく。
数分後、ギッギッ…と違う足音が玄関の方へと過ぎていった。
足音が過ぎ去った後も村長は黙ったままである。

薪が爆ぜる、大きな音を立てた瞬間

Rill Yeg Asnh .

紡がれる言葉、フィアの目の前に爆ぜた火が渦を巻いて宙に浮いている。
例えるなら人魂、拳大の火球がゆらゆら揺れていた。

村長:「その精霊の後について行けばニーディの元に辿り着くじゃろう。
あの子は調律師…生まれついての、調律師じゃ。
わしらが何を言おうとも、何度止めようともこうして出て行ってしまう
…止められぬ。

……護ってやって、くれぬか。」

しゃがれた声が今にも泣きそうな程、細くなっていた。

##################################################
大人が決める事、村が護らなければならない。
その意思がニーディに伝わらず、無力さを痛感した村長が唱えた言葉
調律師へと導く炎がフィアへ託される。

精霊?に導かれるまま森、濃霧の中へ足を踏み入れるゼロとメルディア。
ニーディもまたゼロ…いや精霊を追うべく森へと進む。

第七話(城・湖チーム)

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***** ANOTHER *****
聞こえる
また来たのか
何度も何度も 嫌な時に来る

天を仰ぎ 叫ぶ
行き場のない怒り・不安・後悔
天を仰ぎ 祈る
呼び掛けるように

**********【城・湖 チーム】**********

ユーリ:<…光源が少ない…しくじったな…あの時買い足しておくべきだった…
     「…すまないがランタン油をいくらか譲っていただきたい…。」
     (作業場からランタン油6本くらいを借り受けられるか交渉してみる。代金が必要なら支払う。)

作業員:「これから見回りかい、なら詰め所に予備が置いてあるからそこから持っていくといい。
     へへ、油出すだけでこの濃霧を解決できるなら安いもんだぜ。」

ユーリは詰め所でランタン油を補充する、6本もあれば今宵を歩き回る分は十分過ぎる量だろう。
ユーリ、シェーン、ナークの三人は砦から湖へ足を向ける。
夜の湖付近は冷え込み、防寒具がなければまともに動くことすら難しかったかもしれない。

ユーリ:「…人を軽々と弾き飛ばす…か。
     …夜では湖に落ちれば救助が難しい…。…まずは徒歩で湖周辺を探ろう…。」
     (ランタンに灯りを燈し、湖周辺を捜索)

シェーン:「さて...噂通りだとこの時間帯、この周辺に出るらしいですが...。」
     (明かりを確保しながら湖周辺を歩き、物音や様子の変化がないか察知しようとする)

周囲に気配はないか、慎重に進んでいく三人。
聞こえる音は微風によって木の葉がこすれる音、三人の足音
更に暗闇を覆うほどの濃霧が視界を悪くする。目視できて2m先だろうか…。

ユーリ:「…」
     <…あくまで霧の調査…竜でなくても何かしら見つかればいいのだが…
     (灯りと音、そして寒気を頼りに周囲を探りながら歩く)

半刻程歩いただろうか、一刻か、、、突然シェーンが足を止める。

シェーン:「待ってください...何かおかしい...?」
     (周囲に異変を感じたら、立ち止まり状況把握)

聞こえる、自分達以外の音。
その音は森の方からやってくるらしい。

ユーリ:「………」
     (警戒しつつ、あえて接近し、観察してみる)

濃霧の先にぼんやりと浮かぶ白。
光源だろうか、それが自分達へ向かって近づいてくるのがわかる。

シェーン:「......。」
     <...一体何者でしょうか...。
     (じっと相手を見据え、風貌・様子を観察する)

・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

一度、強い風が吹いた。

##################################################


##################################################

ユーリ達は視線の先が何者なのか視認することができた。
昼に別れたはずのゼロ、メルディアだ。
…後ろに見慣れない少女がいる。

フィア:「・・・良かった。ひとりでは不安なところでした。
     村長から話を聞きました。あの少女は・・・ヨトナの調律師一族の末裔。
     精霊を憩わせるためになら、ほかのモノに目を向けずに突っ走ってしまうようです・・・」

メルディア:「え、フィア?どうしてここに、それにその火の玉は」

フィアが言っているのは少女のことだろうか。
メルディアはフィアに何か驚いているらしい。

少女:「お兄ちゃん達、誰?
後ろのお姉ちゃんと…お友達?」

二人のやりとりをよそに少女はユーリ達を見て呟く

風が吹く…一際強い風に木々は大きく葉を鳴らした
空気が凍った
ように感じた、そう思える程空気が冷え込んでいるのを感じる

##################################################

竜?が出没するであろう時間、三人は探索に出た。
探索の途中に居たのは偶然か、分かれたはずの仲間であった。
仲間達の中には見知らぬ少女の姿が…ヨトナ?調律師?
その少女がヨトナ村に住まう者だということはわかるが…

湖と森林部を挟んだ地点での邂逅、凍りつく空気。
濃霧のその視界の悪さから灯りに映し出されるのは6人の冒険者に1人の少女だけである。

まるで小さな世界に閉ざされたかのようだが、どうしようか。

第七話(村チーム)

##################################################

***** ANOTHER *****
聞こえる
また来たのか
何度も何度も 嫌な時に来る

天を仰ぎ 叫ぶ
行き場のない怒り・不安・後悔
天を仰ぎ 祈る
呼び掛けるように

**********【村 チーム】**********

***** ゼロ・メルディア *****

ゼロ:「・・・・光・・あれ。」
<・・一体どこに・・向かっているのでしょうか・・。
・・まずは・・少しでも・・見えないと・・。>
(精霊の気配だけを頼りに進む静寂と暗闇の中を、僅かでも視界を確保しようと
片手で”光”の印を描き、ウィルオーウィスプを発動させようと試みる)

宙に印が軌跡を描く、するとゼロの目の前に光源が現れた。
光源はぼんやりとしてあやふやな状態ではあるが、半径3mほどの視界は確保できそうだ。

ゼロ:「・・・・案外・・竜に・・出会ったりして・・・・。」
<・・何か居ても・・向こうも視界が悪いの・・同じ・・はず・・ですが・・。>
(穏やかな精霊の気配を逃さないよう、ウィスプの光を可能な限り高く掲げ
周囲を照らしながら足を進める)

ゼロの2m頭上にウィルオーウィスプは鎮座する。
ウィスプを頭上に掲げる為足を止めたからだろうか、後方に物音が聞こえた。

ゼロ:「・・・・・誰です・・。・・・・・・・・白銀・・?」
<・・何が・・潜んでいるのか・・。・・もしかして・・・。>
(気配を感じた方向を暫く息を潜めて警戒。小さな声で呼びかけてみる)

振り返るとそこには村長宅にいた少女、ニーディが立っていた。

・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

メルディア:<思ったより寒い。この寒さで獣たちも参ってく
れてるといいんだけど>
(ニーディと周辺に気を配りながら彼女の後を追って行こうとする)

ニーディは濃霧にもかかわらず歩の速度を緩めない、メルディアも少女の後を追っていく。
しかしメルディアは気付いているだろうか…ニーディの周囲の濃霧が薄れていることに。
薄れた霧は、木々の間から月明りが差し込む程である。

突然、ニーディの先にぼんやりと光が浮かぶ。
光は空へ登っていき、2m程登ったところで静止した。
ニーディが足を止める。ニーディの視線の先には見慣れたエルフの男性、ゼロが居た。

メルディア:「デートかしら?お相手は随分若いみたいだけど」
(ゼロに追いつくと話しかけようとする)


・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

***** フィア *****

フィア:「・・・・・・・・。
     ・・・わたしの力の及ぶ限り。」
    (言葉少なに、しかし、はっきりと答えて一礼して部屋を後にする)

村長宅を出てニーディの後を追うフィア。
出るのが遅かったか、ニーディの姿が見えない。
火球は炎を揺らめかせて森林部へ進んでいく、早い。
フィアは早歩きで炎を追うこととなる。

フィア:「あなたは、ヨトナの血を護ろうとする者?
     ・・・ともあれ、ありがたい。よろしくお願いしますね」
    <朱い炎・・・精霊の一部ではなく、そのもの・・・?>
    (眼前の火球にわずかに瞳を細め、精霊の系統?種類?や意志を感じ取ろうとする)

揺らめく朱の炎はフィアに何を伝えようとしたのか、フィアの能力では感じ取ることができなかった。
しかしその外見、魔力からは炎の精霊であることがわかる。
発生源は暖炉の炎であるが、フィアを導くという行為からして精霊魔法:ファイアボールでないことがわかる。

フィア:「ニーティに出会えるか・・・それとも、ほかのナニか、に先に出会ってしまうか・・・」
    (十分に周囲を警戒し、声なき声や気配に耳を澄ましながら進む)

火球に導かれるままフィアは濃霧の中を進んでいく。
火球はその大きさに反して、周囲の景色を光で照らしていく。
範囲は半径2m程だろうか、歩き進むには十分な灯りである。
だが10分、20分、25分…位だろうか、時間が経つにつれ火球の大きさが小さく、萎んでいくのがわかる。

?????:「―――かしら?―――は随分―――――けど」

誰かの声がした。
声のした方向を向くとぼんやりと明るい気がする。
誰が居るのか…警戒しながら進むとそこには見慣れた姿、三人が対峙していた。
女戦士、メルディア
調律師の娘、ニーディ
精霊使い、ゼロ

一度、強い風が吹いた。

##################################################


##################################################

ゼロ達は強い風に向き直る。
そこには昼に別れたはずのユーリ、シェーン、ナークがいた。
…後ろに濃霧が漂っており、先が全く見えない。

風が吹いた瞬間、ゼロは違和感に気付く。
追ってきたはずの精霊の気配が消えた事に。

ゼロ:<・・・・消えた・・?・・それとも・・溶けた・・・?>
(自らの交信能力に小さくため息をつくも、再度交信を試みようと)

精霊交信に集中しようとした矢先、森の方角から女性の声が聞こえる。
影はメルディアの後方、エルフの女性が今にも消え去りそうな炎と共に姿をあらわす。

フィア:「・・・良かった。ひとりでは不安なところでした。
     村長から話を聞きました。あの少女は・・・ヨトナの調律師一族の末裔。
     精霊を憩わせるためになら、ほかのモノに目を向けずに突っ走ってしまうようです・・・」
    (ほっとしたように息をつき、村長から聞いた話を手短に伝える)

メルディア:「え、フィア?どうしてここに、それにその火の玉は」
(フィアを見つけると話かけようとする)

途端、火はヂッ…と音を立てて消え去った。

ニーディ:「お兄ちゃん達、誰?
後ろのお姉ちゃんと…お友達?」

風が吹く…一際強い風に木々は大きく葉を鳴らした
空気が凍った
ように感じた、そう思える程空気が冷え込んでいるのを感じる

##################################################

精霊を追い、少女を追い、辿り着いた先に分かれたはずの仲間がいた。
湖と森林部を挟んだ地点での邂逅…向かい風が冷たい。
突如消えた精霊の気配、火の精霊。
状況としてはこのくらいか…しかしやけに寒い。
薄れていたはずの霧は再び濃さを取り戻しており、視界に入るのは6人の冒険者に1人の少女だけである。

まるで小さな世界に閉ざされたかのようだが、どうしようか。

第八話

##################################################

真夜中の霧中、偶然か否か、意図せぬ合流を果たす冒険者達。
月明りは霧に掻き消され、ランタンの灯りとゼロのウィスプのみが光源となる。

フィア:「これは驚きました・・・。皆さん・・・なぜここに?
城砦の方へ向かわれたのでは?」
(強い風に瞳を細め、ゆっくりと問うが、急な邂逅に驚きの響きが混じる)

ゼロ:「・・君は・・村長さんの所の・・。・・確か・・ニーディでしたか・・。
・・それにメルディアも。・・・ふぅ。
・・・僕は・・ラーディとは違って・・夜目が利かないので・・
流石にこんな時間に・・デートは・・。・・・・!・・・・フィア・・。」
(振り返った先に居た少女と見慣れた顔に安堵の表情で微笑を向け、続いて現れた
炎と気配にも視線を向けると、少し驚きの表情を浮かべる)

ゼロ:「・・・・!・・ユーリ!・・シェーンにナークも・・。・・ここは・・。
・・・・いつの間にか・・湖城付近まで・・来ていたのですね・・。」
<・・まるで・・全員が・・何かに導かれたかの様に・・この場へ集まったのですね・・。
・・先ほどの気配は・・今は・・感じ取れない・・・。>
(突き刺さる程の冷たい風に目を細めながら、急に眼前に現れた仲間を捉え
驚きながらも、現状を把握しようと周辺を見回し)

シェーン:「...なんだ、ゼロさん達でしたか。...えっと、その子は?」
(現れたのが村組と分かり緊張を解きつつ、彼らが連れている少女を見て首をかしげる)

辺りを見渡せば包みこむかのように濃霧が漂っている。
そう、冒険者達を包むかのように濃霧は漂っている。

メルディア:「ええ、彼らはあたし達の仲間よ。紹介するわね、
彼女はニーディ、村で森の案内を買って出てくれた子よ。
で、こちらが・・・」
(ニーディに合流したメンバーを紹介し、
合流組にもニーディのことを紹介する)

メルディアの紹介に首を傾げるニーディと呼ばれた少女。
背丈からして8歳前後だろうか…動物の毛皮でできた外套を羽織り、
外套の合い間から紅白のローブが見える。
出会った直後ではフードをかぶっていたが今はフードを外し、
肩で切り揃えられた栗色の髪の毛が露わになっている。

フィア:「わたしはフィア。
村長とお話をして・・・炎の灯りを追ってきたら貴方達に合ったんです。」
(メルディアか誰かの紹介の元、様子を見て会釈する
柔らかくほほえみを向けた後、やりとりは他のメンバーに任せるようす)

シェーン:「シェーンです、よろしく。
...そういえば皆さんはどうしてここに?
ヨトナ村で何か聞いてきたんでしょうか?」
(少女に微笑みながら挨拶した後、思いついたように疑問を口に出す)

メルディア:「こっちではこんな事があったわ。そちらでは何か収穫はあった?」
(合流したメンバーと情報交換を試みる)

村に居た冒険者は、ユーリ達に今までに収集した情報を伝える。
村で知ったのは濃霧の中でも森の中を案内できるという少女、ニーディ。
ニーディの母親は調律師と呼ばれる人物で精霊を憩わせる術を持つらしいが
精霊の調律を行っている最中に"事故"で死んでしまったこと。
故にニーディも調律師としての力があるのではないか…とのことだ。

村で得た情報にユーリはこう返す。

ユーリ:「…我々は竜のようなもの…をまず探ろうと考えていた…。
…夕から夜、湖周辺に現れ、周囲の気温を下げるらしい…。
…湖に向かう途中、あんたらに会った…。」
(端的な状況説明を終え『…そちらは…?』と言うように村に行った者たちを見る。)

ユーリ:「…白銀の鱗…スカイブルーの瞳…額に翡翠色の水晶…。
…触れても霧のように手ごたえが無く…強風を使う…。」
(竜の特徴をポツリポツリと説明。)

砦修繕を指揮する男、ガータンの案内で砦内での聞き込みを行う。
城での主たる情報は"竜"。
記憶亭の冒険者達より先に訪ねてきたという三人の冒険者の事。
その冒険者達は竜らしき怪物に挑んだが結果は惨敗、大怪我を負って逃げ帰ってきたとのこと。
その怪物はユーリの言うとおりの外見、特徴らしいが…

フィア:「・・・わたしは、ヨトナの村長から話を聞いて・・・
調律師の末裔である彼女・・・ニーディを護ってほしい、と。」
(ようやく追いついたと思われる少女に視線を向け、どこか不思議そうに首をかしげる)

ゼロ:「・・・・?・・・・ヨトナの・・”調律師”・・?
・・・精霊を憩わせるって・・一体・・。・・ニーディが・・・・?」
<・・先ほどまで感じ取れていた気配が・・消えて・・しまった・・?
・・それに・・フィアの前に漂っていた・・炎・・も・・。>
(消えた精霊の気配に疑問を抱きながら、耳に飛び込む聞き慣れない単語にフィアと
ニーディへ視線を落としジッと見つめる)

情報交換を行う冒険者達の間で心ここにあらずといった様子で落ち着かない挙動を示すニーディ。
チラチラと湖の方向を伺っており、ゼロやフィアの視線も意に介さないようだ。

フィア:「・・・・・・・・。」
<この後は・・・まずは、ニーディさんの話を聞かなくてはならないでしょうね>
(周囲が口々に話し出すのをまずは聞く姿勢になりながら周囲の声に心を澄ます)

メルディア:「ニーディ、なぜここにやってきたの?
森は怖くないって言っていたけど・・・」
(周辺に気を配りながら、彼女になぜここにやってきたのかを尋ねる)

ニーディ:「気になる子が居たの。エルフのお兄ちゃんが追っかけていった子。
いつも暖かいのに、いつもここが苦しくなるの…。」

メルディアに向き直り胸に手を当て話す。
その表情は村で見た笑顔ではなく、苦しそうな、切なそうな表情だった。

ユーリ:「…城に寄って…何をするつもりだった…?」
<…こちらは砦を使いたいと考えてもいる…。
…この娘…砦に寄せて良いものか…?>
(村組も良く把握してないらしい少女に疑いの眼差しを向け。)>ニーディ

シェーン:「えっと...ニーディ...でしたっけ。
最近この辺りに竜が出るって噂をよく聞くんだけど、
何か知らない?この霧と何か関係あるのかなって思って...。」
<村の人だったら何か詳しい事知らないでしょうか...>
(少女と目線の高さを合わせながら、柔らかい口調で質問しようとする)

ニーディ:「おしろ?ニーディはおしろには行かない、絶対に…
お姉ちゃんが言ってる"りゅう"はわからないけど、きっと優しい子だよ。」

胸に当てている手をギュッと握る。
少女というには似つかわしくない緊張めいた表情でユーリとシェーンを見た。


メルディア:「やれやれ、もったいないんだけどな」
(毛布を裂いて簡易の防寒具を作り、ガントレットやレガース
の内側に仕込もうとしてみる)

ビリリッと音を立てて裂かれる毛布。
防寒具の代わりと仕込んだ毛布だったが、これはなかなか暖かい。
しかし若干間接の自由が利きにくくなった感じがした。

※:毛布を消費しました。このミッション中では防御点数+1 回避-1とカウントします。(寒さの影響を受けません。)

ユーリ:「……………」
<…空気が冷えた…近くに居るのか…?
…城に来たときも冷えていたな…。>
(少女の問いに答えず一瞥、そして、背負った槍の包みを手に取り警戒する。)

シェーン:「...かなり冷え込んできましたね...。」
(緊張した顔に戻って、周囲に何か異変がないか察知しようとする)

片や担いだ槍に手をかけ、片や表情は女性から闘士へ
途端――風が舞い上がりニーディの外套が強風に煽られ空へ飛んでしまった。
外套が手から離れてもニーディは大声を上げることなく、ただ一言呟いた。

ニーディ:「――――――」

強風で聞き取れなかった。
フィアはニーディが呟いた言葉が、誰かを呼んだものではないか?と感じる程度。

ゼロ:「・・・。・・・・刺さるような・・冷たい風・・。
・・相見えることも・・許されない・・豪雪の・・申し子・・・白銀・・。」
<・・・湖城に近い・・と言うことは・・竜も・・・?・・・・ここに・・
導いてくれた・・先ほどの精霊は・・・一体何を伝えたかったんでしょう・・。>
(冷たい風に、思い出した詩を小さく呟いた後、そっと目を瞑ると再度精霊交信を試みる)

思考の中にノイズが走る、様々な精霊の想い、言葉、感情が入り混じっていて交信にすらならなかった。
この道中、村…これほど精霊交信ができなかった事はあっただろうか…?

瞬間、ウィルオーウィスプの光が掻き消える、ランタンの灯火が揺らめく。
湖の方角に濃い影が浮かび上がった…灯火がぼんやりと影の正体を映し出す。

光に照らされ滑らかに煌く白、頭部と思われる箇所には一対の蒼と翡翠。
空から現われたのか、巨大な羽を羽ばたかせ地上に舞い降りた物体
凍てつく強風を撒き散らしながら、音なく降り立つその姿は威厳を示すかのよう
冒険者達の目の前に現われた存在は、真っ直ぐに冒険者達を見据え甲高い咆哮をあげた!

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冒険者達の前に降り立つ存在、耳を覆いたくなるほどの咆哮は敵意の表れのよう…
これが竜だというのか、それともゼロの言う白銀なのだろうか

第九話

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フィア:「・・・・?」
    <絶対。に?・・・気のせいかもしれないけれど、>
    (何か引っかかったように、つかの間、眉を寄せる)

瞬間、言霊が湖を震わせ、森をざわめかせる。
城にも届いているのではないか…と思う程大きな咆哮だ。

着地した後も風は収まらず相変わらず冒険者達へ吹き付ける。
この状態が続くようであれば防寒具を身に纏っていても凍死してしまうかもしれない。

ユーリ:「…木の後ろにでも隠れてろ…。」
    <…風が武器なら…私に庇いきれるのか…?>
    (ニーディや後衛に一言だけ警告しつつ、槍を地に突き立て、ランタンを庇いながら竜の行動を警戒。)

フィア:「・・・っっ!」
    <これが、あの・・・竜・・・?>
    (とっさに足を踏み出し、ローブの後ろ側にニーディをかばう)

ナーク:「わわっ 大きいなー。」
    (眉間に皺をよせ、弓を放てるよう番える用意をする)

シェーン:「...あれが噂の竜ですか...。」
     <かなり怒ってる...やっぱりあの三人のおかげでしょうか...>
     (竜を見据えつつ、自分の配置に移動)

メルディア:「さてさて、大ボスのお出ましね。魔法の生き物は苦手なんだけど」
       (ニーディと竜の間に立ちふさがる感じでガード)

竜の目の前にメルディアを中心にユーリとシェーンが脇を固めるように配置する。
後衛はゼロにナーク、そしてニーディを強風から庇うフィアがいる。
竜は着地してから身動きをとらず、こちらの様子を伺っているように見える。

ゼロ:「・・私たちは・・攻撃する気はありません。・・貴方に会いに来たのです。
     ・・どうか話を・・聞いてください。」
   (攻撃してくる気配の相手に向けて視線を外さずに呼びかける)

ゼロの言葉に竜は唸り声と共に牙を剥く。
竜の周囲に漂う霧は濃くなり、一歩、二歩と冒険者達に近づいてくる。

メルディア:「怒ってる・・・わよね。ニーディ、彼は何に怒ってるのかしらね。
       分かればなだめもできるんだけど」
       (ニーディにあの竜をなだめられないか聞いてみる)

ニーディは首をゆるゆると横に振る。
瞳を潤ませて蒼を見つめる、竜の歩みは止まる事を知らない。

メルディア:「やってみるか」

メルディアが手持ちのナイフを取り出し構えた瞬間、フィアの声がメルディアを制止させる。

フィア:「・・・待って。彼女と会話が通じるかも知れません」
    <敵意・・・でも殺意ではない・・・この竜の正体は・・・>
    (蒼と翡翠に半ば目を奪われるように見つめながら、目の前の存在に集中しようとする)

ゼロ:「・・少し・・力を・・貸して下さい・・ね・・。」
   <彼女に精霊を沈める力があるのであれば・・もしかしたら・・これで安定した
    ・・交信が少しで・・できるかも・・。>
    ニーディの肩に手を置き、相手の気配を読み取ろうと精霊交信を試みる。
    可能であれば相手の存在する位置や属種などを)

二人が感じるのはエイラの湖、まるで湖の中に居るようなひんやりとした感覚…
勿論湖の中に居るというのは例えだ。しかしそう言っても過言ではないほど辺りは"水"で包まれている。
ゼロなら直感的にわかるだろう、精霊魔法似通った感覚の物がある…ウォータースクリーンだ。
フィアなら持つ知識と経験から推測ができるだろう、クリエイトミストではない…しかしこの霧には力を感じる。
これはそういう力を扱える者、自ずと答えが導き出される。
目の前に居る竜はただの幻想に他ならない。

高密度の力が模ったもっと身近で形のある者、水の精霊だ。
時折霧に混じって風の息吹を感じる。どうやら風の精霊の力も強いようだ。

しかし…これほどの力を操る精霊である。
万が一精霊感知、精霊交信を失敗しようものならば精神が衝撃を受けただでは済まなかっただろう…

『――――そう、ニーディが選ぶだけはあるみたいね。』

ゼロの頭に声が響く、瞬間ゼロの目の前に光が溢れ出した。

ナーク:「うおっ まぶしっ」
    (急な閃光に両腕で目を隠す)

ゼロの目の前に浮かぶはウィルオーウィスプ、先程ゼロが召喚した精霊だ。

フィア:「・・・ニーディ・・・貴女は、“このひと”に会いに来たんですね?」
    <いまここで、わたし達がするべき事は何?>
    (確かめるようにニーディを見やり、いつでも宙に文字が描けるように指先に力を込める)

ニーディ:「う…うん。」

もぞもぞとフィアの腕から離れてメルディア達の前へと進み出るニーディ。

シェーン:「...ニーディ、大丈夫?」
     (ニーディに声をかけつつ、竜を目の前にした反応・様子を観察してみる)

ニーディは振り返り頷く。
光の精霊に照らされ浮かび上がる少女と白い霧の竜。
一瞬だが…この冷たい空間の中、シェーンはその光景を幻想的だと感じたかもしれない。

ニーディ:「聞こえた…やっと聞こえたよ。 でも…
      ニーディが選んだわけじゃないよ、ニーディと一緒に…ここまで来たの。」

シェーン:<果たして人間の声が通じるかどうか...>
     「...聞いてください、私達は無闇にあなたを狩りに来た訳ではありません。
      この森がどうして霧で覆われたのか、この霧を晴らす方法はあるのか、
      答えを求めに来ただけです。」
     (竜に向かって積極的に攻撃する意志はないことを呼びかける)

ゼロ:「・・この地域の人々は霧に手を焼いています・・。・・この霧と貴方が・・
    共にあるのなら・・・貴方もいつまでもこの地にいる訳ではないでしょうから・・
    移動する手伝いを・・させて頂きたいのです・・。」

ナーク:「寒いんだからなんとかしてよー」

『これも星の巡り合わせ、かな……ニーディが居るんじゃこの姿で居ても意味ないか。』

竜から発せられる声…高めの音域、アクセントから女性というより女の子、に似た声が風に乗って冒険者達に伝わってくる。
竜が前足を浮かせ羽ばたく。すると纏っていた霧が一斉に分散し、白き竜から人影が一人浮かびあがってきた。

精霊:「久しぶりね、ニーディ。 そして初めまして…名も知らぬ者達よ。
    あぁでも名前言わなくていいからね、知ろうとも思わないから。」

明るい声で毒を吐くのは小柄の少女。
蒼色の瞳にサイドポニーテールでまとめている若葉色の髪の毛。
ポニーテールを結んでいる部分には黄色いリボンが巻かれている。
白色のブラウスに藍色のロングスカートを履いており、街にいる少女となんら変わりはないが
決定的に違う箇所は背中に生えている半透明の二対の羽である。

ユーリ:<…さて…人の言葉が理解できるかは解らんが…。>
     「…お前はこの湖で何をしている…?
      …お前が居るためかは解らんが我々は濃霧で難儀している…。
      …この霧と無関係なら構わんがお前が原因なら早々に立ち去ってもらいたい…。」
    (質問し、砦の人間たちの思惑をどこまで知っているか、相手に何か思惑があるかを測ろうとする。)

精霊:「貴方達の言葉を一つ一つ丁寧に返して行くのは骨が折れるわ…簡単に答えてあげる。
    …答えは否。」

精霊:「この霧は私自身…安寧を司る霧、この地で荒れ狂う精霊を鎮める為の霧よ。
    そして私はこの霧を維持してエイラの地を護る義務がある…
    はいそうですか、と霧を退くわけにはいかないわ。」

厳しい口調で三人の言葉を一蹴する精霊。
だが精霊交信を行っているゼロにある種の感情が流れ込んでくる。

……「悲痛」である。

##################################################

原因は竜ではなかった…竜など居なかった。しかし竜でなかったとしても気を抜いてはいけない。
冒険者達の目の前に居るのは湖全体を覆う程の霧を発生させる、冒険者を吹き飛ばす、紛れもない力の持ち主なのだから…。
この地の安寧を願う精霊…冒険者達は近づきつつある真理にどのような行動を見せるのか。

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