大陸を歩む者たち(常夏の休暇)1
大陸を歩む者たち(常夏の休暇)
舞台背景:千年都市ガウディ
天聖歴1045年、遥照の月
冒険者ギルドという場所は、どちらかというと「品の良くない場所」だと誰しもが思うところであり、その認識に間違いは無いだろう。
傷だらけで汗臭い男たちが圧倒的な数を占め、知力よりも暴力が優先されるようなイメージを持ってしまうのは、その場所が「どんな仕事でもやって来い」といわんばかりの風土を持つからである。
そんな冒険者ギルドの一番目立つ場所にそのポスターは張り出されていた。
仕事の依頼ではなく、誰かの懇願でもない……人々の手で引きちぎられる数々の依頼書の真っ只中にあって、そのポスターは明らかに異彩を放っていた。
「さぁ行こう。常夏の島ヴォンジアへ!!」
そんなキャッチコピーが書かれたポスターの中には白い砂浜と青い海と緑の森が美しく描き出されていた。
ヴォンジア島のヴォンガの街でのバカンス参加者を募集する。
募集人数:制限無し
期間:一月程度
待遇:ヴォンガとガウディの往復船の乗車券(大部屋)
条件:特に無し
ヴォンガまでの往復運賃といえば、銀貨で50枚は下らない額である。にもかかわらずその料金は冒険者ギルドが負担の上、よくよく条件を読んでいけば食費についてもヴォンガで宿をとらずに船を宿の代わりとする場合には朝と夜の二食が付くという破格の条件であった。
「あれ、一体なんだいな?」
「いや、読んだままだ。まさに慰安旅行だな」
さすがに目を丸く下のは幾人もの冒険者たちが受付を訪れると、冒険者ギルドの受付は苦笑交じりにそのように答え、自分も参加したいものだと羨ましそうにため息をついてみせた。
「ちょっと前に冒険者ギルドを含めて各所のギルドの腕利きたちが妖都サーゲオルーグとの一戦の際に多くの命を落としたこともあって、ガウディ評議会からあまりにも景気の良い褒美が贈られたというわけだ。なんでもシーポートの商会であるリュクセンドリア商会が旅行用の船を提供してくれるんだとさ」
「はぁー、景気がいいこったなぁ」
「そりゃぁもう。なんせ、冒険者ギルドだけではなく、記録ギルドや魔法学院やエリウス神殿にも張り出されているんですから。実際、日々働いている私のような者もいるわけですから参加者が数百人になるなんてことはないでしょうしね。それでも、交易用の輸送船を出しもてらえるわけですから、かなりの数が乗れるって話ですよ。実際、ヴォンガに移住を考えているような一般人もこの機会を逃すまいとかなりの数参加するようですし」
受付の恨めしそうな視線などもはやどこ吹く風と、多くの冒険者たちがその美しい海岸線が描かれた楽園のようなポスターを見つめ、そそくさと水着などの用意を始めるまでさしたる時間は必要なかったのではないだろうか。
「家族旅行に婚前旅行……あぁ、羨ましいねぇ」
カウンターに肘をついてため息を付くギルドの受付担当者は独身で、できることなら自分も今付き合っている彼女とその旅行に行きたいものだと……不謹慎なことばかりそのポスターを見ては考えてしまっていた……。
舞台背景:千年都市ガウディ
天聖歴1045年、遥照の月
楽園への誘いのような魅惑的なポスターが各ギルドなどに掲示され始めた頃、「海燕号」と呼ばれる船がガウディの港へと寄港していた。
「海燕号」……それはリュクセンドリア商会が持つもっとも大きなガレオン船である。もともと、シーポートにおいて中堅の老舗であったリュクセンドリア商会は、何隻かの船を持ち、シーポートを拠点として交易によって生計を立てている交易商会であった。
しかし、閃光の悲劇をはじめ、先の王都陥落により、ガウディの役割が大陸の交易を担う立場から、戦場の前線に位置する都市と移り変わる中で、より交易力の強化、及びガウディへと物資を運ぶ輸送力の強化を意識せざるを得なくなったシーポートにおいて、船という輸送力を持ち、また船を動かすための貴重な船員という人的資源を持ち、何よりも地味でありながら確実に仕事をこなすリュクセンドリア商会の経営は上々であった。
余談となってしまうが、大陸において妖魔との戦乱に明け暮れているガウディやシーポートの者たちであっても、「海戦」という言葉は実は耳慣れないのではないだろうか。
実際、海上において軍が激突したという話はここ数年聞いたことは無いだろうし、何よりも船という存在が時代の流れの中にあって変遷することを余儀なくされてきたところがある。
シーポートもガウディもかつては奴隷という無償の労働力があったために、ガレー船が幅を利かせていた時代があったのだが、奴隷解放宣言が行われるよりも前からすでに大海を渡るための船は帆船へと移り変わっていた。
ガレー船では奴隷の体力の問題もそうだが、どうしてもヴォンジア島との遠洋航海に不向きであり、さらに活発化する交易において、段々と船の足の速さが重視されるようになってきていた。
しかし、ガレー船の時代から変わらないこと、それは「海上戦闘における華」が魔法使いであるという現実である。確かに船には巨大なバリスタが設置されているが、その巨大なバリスタの矢に炎を纏わせることで一撃必殺の矢としたり、また、帆を魔法の力で焼いたり、逆に船を守るために敵船からの魔法を弾くなど、魔法使いの力は海戦においては必須のものとなっていた。
ただ、魔法使いの力はあくまで船同士が接舷するまでの間に限られる。船同士が接舷した時……そこから先は地上の戦闘と変わらず、あくまで武器による斬り合いとなることになるのだが、地上とは違い足場が不安定な上に、意のままに接舷するほどの技量を持つ船乗りというのは貴重であるがゆえに……接舷する前に船が沈むことは決して珍しいことではない。
……帆が大きく風をはらみ、その力に押されるように波を切り裂いて船は青い海に白い波飛沫を立てながら軽快に走り出す時、大海原と呼ばれるもう一つの世界が、船に乗り込んだ者たちの視界いっぱいに広がっていくのではないだろうか……。
PL向け情報
ミッション「大陸を歩む者たち(常夏の休暇)」の募集が開始されました。こちらのミッションは、MOHGとは別の場所に掲示板とチャットを用意して行われます。このミッションへの参加条件は、「忙殺」の対象となっていないことです。
つまり、「私生活が火の車」「仕事で尻に火がついている」「結婚生活破綻の危機」などの状態のPLの場合は「参加不可能」ということです。
また、すでに死亡しているキャラクターは参加はできません。
このミッションは、「参加表明」の後、参加が決まった方々とともに、「BBS」と「チャット」を利用して行われます。
また、CMはダイスチャットにて行われますが、その回数は進行状況などによって変わってきます。
このミッションは、「参加表明」のメールの後、参加が決まった方々にのみ「BBS」と「チャット」の場所を知らせて行われます。なお、一回目の参加表明はメールですが、その後は500文字程度の小説の投稿とBBSとCMが主となります。
また、出発日から現実時間でも約一月でミッションは終了します。
冒険者への状況説明
一回目の投稿において、下記の投稿のきまりに沿ったメールを「GMML」まで送ってきてください。
投稿のきまり
「大陸を歩む者たち」の締め切りは6月6日の22時00分までとします。
ミッションメールの宛先
GMML:planet@qw.parallel.jp
ミッションメールの書き方
(例)
件名「大陸を歩む者たち」
PL名:○○
PC名:○○=○=○○(略称:○○)
同伴者PC名:○○(PCとの関係:子供)
メールアドレス:???@???
キャラの容姿:500字以内(武具装備している様子を始めとして、自分のキャラを「活き活き」と描写してください)
1 各ギルドなり魔法学院なりの各施設の受付に申し込みをするアクションを二つ。
(例)
○○:「俺、この仕事をうけたいんだけど?」
(受付へと張り紙を持って現れる)
○○:「こう見えても三つも精霊魔法を使えるんだぜ!!」
(受付へと自分の技量をアピールする)
なお、このミッションにおいては家族や恋人の同伴を許可します。二回目の投稿においては海上における船旅の様子をBBBに投稿してもらうことを考えているため、後にわかりますが、GMが「NPC許可」としたスレッドにおいては家族や恋人と楽しむ様子を記載してもらって構いません。
ただし、最初の申し込みの段階で同伴者として記載されている方以外を後から追加することはできません。
また、CMが発生した場合の参加はPCのみとします。
ちょっと早い一夏の思い出を楽しんでください。
担当GM:海月